ディズニーシー、「来園者の高齢化」も何のその、3200億円を投資した新たなエリアでも「量より質」の勝ち筋
アトラクションの「アナとエルサのフローズンジャーニー」では、ボートに乗って「レット・イット・ゴー~ありのままで~」や「生まれてはじめて」などの楽曲とともに映画のストーリーを体感できる。 アトラクションを待っている人々が退屈しないで済むような工夫も凝らされている。アナとエルサの子ども部屋をイメージしたようなプレイルームや図書室が設けられており、アレンデール城の中にいるかのような雰囲気を楽しむことができる。
■総投資額はディズニーシー開業時に匹敵 オリエンタルランドにとって、ファンタジースプリングスは待ちに待った開業だ。 アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニーとファンタジースプリングスの開発に合意したのは2018年。当初、2022年度の開業を目指していたが、コロナ禍などの影響で延期を余儀なくされた。 総投資額は3200億円。拡張のための投資額としては過去最高となる。ディズニーシー開業時の総工費約3350億円に匹敵する規模となっている。
ファンタジースプリングス開業で見込んでいる効果は絶大だ。オリエンタルランドは年間売上高を750億円押し上げるとみている。 今年4月に発表した2024年度の業績予想は売上高6847億円(前年度比10.7%増)、営業利益1700億円(同2.8%増)。売り上げ、営業利益ともに過去最高を見込んでいる。 しかし、業績絶好調の裏で直面しているのが、来園者の高齢化だ。 同社が毎年発行しているファクトブックによれば、2018年度は来園者の50%が18~39歳だった。それが2023年度には41%へ減少。一方で40歳以上の来園者は21%から33%に上昇している。
■高齢化を招いた年パス休止と値上げ この原因は、年間パスポート(年パス)の休止とチケットの値上げにある。オリエンタルランドによれば、年パス利用客の多くが学生や若年層の会社員だった。 「ディズニーの混雑状況を考えれば値上げは妥当な戦略。値上げをすれば、可処分所得の多い高めの年齢層の来園者が増える。オリエンタルランドも想定していた変化ではないか」。そう競合の幹部らはみる。 コロナ禍を機に、オリエンタルランドは入園者数を絞る反面、体験価値を上げることで1人当たり単価を引き上げる「量より質」の戦略に舵を切っている。年パスの休止や値上げはそれに沿ったものといえるだろう。
ファンタジースプリングスの開業後もその方針は堅持する。 アプリで対象アトラクションのスタンバイパスや有料のディズニー・プレミアアクセスの取得などが同エリアの入場には必要となる。エリアへの入場人数を制限することで快適性を保つと同時に、有料チケットの販売によって1人当たり単価をさらに高めることができる。 ただ、若年層の来園者は将来のファミリー層。次の世代の顧客を生み出す可能性の高い顧客セグメントだ。意図的に作り出しているともいえる来園者の高齢化。価格戦略とうまく折り合いをつけていくことが重要だろう。
星出 遼平 :東洋経済 記者