【認知症猫の介護 リアルケース】他人事だと思っていた認知症「正解を決めつけず、できることの中からベストな方法を探していった」
ペットの高齢化に伴い、認知症になる犬や猫が増えているという。「うちの“子”に限って…」はあり得ない。どんな犬や猫もなりうる病気について、飼い主はどう向き合い、何を知っておくべきか――。イラストレーター・林ユミさんの愛猫のボンが認知症になったのは19才のとき。3か月に及ぶ、暗中模索の介護について振り返ってもらった。 【漫画で読む】「家の中で行方不明!? 隙間挟まり事件」を漫画の内容で読む
認知症なんて他人事だと思っていた
「猫も認知症になる、という話は本やインターネットなどの情報から何となく知ってはいたのですが、どこか他人事で、ボンが当事者になるとは考えてもいませんでした」 と話すのは、イラストレーターの林ユミさんだ。ところが、愛猫のボンは19才になると突然、半径1mほどの範囲をぐるぐると旋回するようになったという。 「狭い範囲をぐるぐる回っていて、明らかにいつもと様子が違う。どうやら本人はまっすぐに歩こうとしているけれど、バランスがとれずに体が左に傾き、その結果、ぐるぐる回ってしまっているようでした。 これはもしかしたらと、すぐに動物病院を受診。てんかんなどほかの病気の可能性が低いことや、シニア猫であることから“認知症”と診断されました」(林さん・以下同) 猫の19才というと人間なら約92才。認知症になってもおかしくはない。 「診断を聞いて、ボンはこれからどうなるの?ボンとの暮らしは今後どう変わるの?と変化への不安で押しつぶされそうになりました。そして、見て見ぬふりをしてきた“ボンとのお別れ”が、確実にあるものなのだと、現実を突きつけられたように感じました」 林さんは、ボンが認知症という現実を、すぐには受け入れられなかったという。
人の認知症の本が意外にも役立って
そんな林さんが、認知症との向き合い方のヒントとしたのが、人の認知症の本。 「認知症に関して正しい知識がなかった当時の私は、“認知症=何もわからなくなる”と思い込み、不安でたまらなくなりました。そこで、猫の認知症について勉強しようと思ったのですが、当時は動物の認知症の本はあまりなくて…。ならば同じ哺乳類だし、多少は共通することがあるはずだと人の認知症の本で勉強することにしました」 するとそこには、認知症患者があてもなく歩き続ける理由が書かれていた。 「徘徊などの認知症による行動は、過去の習慣や思い出などが関係していることが書かれていました。人とは違いますから、ボンには当てはまらないかもしれませんが、それでもやはり、ボンにはボンなりの理由があって、ぐるぐる回っているのだろうと思いました。ボンもきっと変化していく自分に困惑している。ボンの気持ちを大切に、ボンが安心して暮らせる日々を守っていこうと、腹をくくりました」 こうした思いは家族全員で共有したという。