小泉今日子に聞く、対話の心得。「人の言葉で傷つかないし、私も人を傷つけないようにする」
下の世代を育てないと、のちのち社会が成り立っていかない
―SNSで声が上がるようになり、人権や社会課題への意識が変わっていることを感じますが、社会全体を見渡したときにまだ変わっていないとも思います。最近小泉さんは、テレビ業界について「世の中がガラッと変わっていっているのに、昔のムードのまま押し通そうとしている」「変わらないといけない」と『文藝春秋』の対談で話していました。権力構造が変わらないことはテレビ以外の場面でも感じることがありますが、「昔のムードを押し通そうとしてしまう」のはなぜなのか、ということがすごく気になっています。 小泉:きっと、男性社会みたいなものを捨てきれない人たちがいっぱいいるんだろうなと思います。きっと下の世代の人たちももう大変だと思っているのに、上が変わらない。フェミニズムってきっと女性と男性が戦うことでもないし、女性同士が戦うことでもない。男性の意識が変わったら簡単に変わるんじゃないかなという気がすごくします。 男性社会というものがすごく根深く存在する世界で生きようと思った人たちは、いっぱい嫌な目にも遭ってきたんだろうと思うんだけれど、それを嫌だなと思っている人たちが次に同じことをやってしまうということは、すごく子どもっぽいぞって思います。うまく言えないけれど。 あとやっぱり、いまは60~65歳くらいで定年になりますが、なぜ定年がくるのかというと、下を育てたいからですよね。じゃないと、のちのち社会が成り立っていかないじゃないですか。政治とか、より若い人に担わせた方がいい気がするんですけど、下の世代や女性を育てないという構造になっている。 なぜそこにしがみついちゃうの? お金もいっぱい持ってるでしょう? 生きていけるでしょう、もっと欲しいの? みたいな感じになっている。どんどん若い人を育ててグローバルな国になってほしいですけど、すごくドメスティックな国になっているなという感覚があります。 ―よく「椅子を空けない」問題と言われますが、なぜなんでしょう……。 小泉:それがなぜなのか、となっていることがおかしいですよね。たとえその人たちがご高齢だったとしても、世の中が良くなっていたら感謝されるはず。それなのに感謝できない気持ちが生まれているということは、どっちにしても何か問題があるわけで。国民が背負うことがどんどん増えていって、夢も希望もなくなっちゃって、でもお金持ちばっかりが良い待遇になっていく。それはおかしいよねって思います。 ―小泉さんがそういったことを発信される原動力はどんなところにありますか? 小泉:なんかもう、守るものも別にないんですね。私が発言したことでバーッて非難を浴びるかもしれないけれど、そんなに傷つかないというか。そうなったことで、考えるきっかけになっている人のほうが多いんじゃないかなと思うんですよ。 とにかく何も言わないで、刻々と時間が過ぎていくことの方が私は怖く感じるんですね、この状態なのに。私ごときの発言がワワーって騒がれたり、SNS上でやり合うとか、すごい健全なんじゃないのって思ったりします。意見はいろいろあるのが健全だし、それを見えなくしたり、隠しちゃったりすると何も変わらない。