小泉今日子に聞く、対話の心得。「人の言葉で傷つかないし、私も人を傷つけないようにする」
小泉さんが感じたコロナ禍の変化。「自分の人生、人任せにできない」
―『ホントのコイズミさん』の最終回で、小泉さんが打ち合わせも含めた3年間のことを「人々の意識がどんどん変わっていった」と振り返っていて。コロナ禍でライフスタイルも大きく変化したと思いますが、意識の変化とは? 小泉:まさにコロナ禍にオファーをいただいて、その最中に始まった番組でした。私自身が実感したのは、それまでずっと忙しくて。ぼけーっと自分のことを考えたかったし、考えるべきだと思っているけど、エンジンかけっぱなしで走ってる感じでした。高速道路の出口が見つからないみたいな日々を過ごしていたし、そんなふうに感じていた人はいっぱいいるのではないかと思っています。 でも、コロナで唯一のプラス面があるとすると、「休憩所」みたいな感じがあったと思うんです。車を止める場所が、一時的かもしれないけどあった。 不安もあっただろうから余計だと思いますが、自分のことをちょっと考える時間がやっと与えられたみたいな感覚があった。それこそライフスタイルを変えた人や趣味を持った人、好きなものが増えた人、いらないものを捨てた人もいっぱいいるだろうし。 そして、やっぱり自分の人生だから、人任せにできないなというムードが以前よりは少し強くなった気がします。それは世の中に対しても、政治に対しても。そんなムードが少し高まった気はしました。
「未来は豊かになる」と思い込んで生きてきた世代
―「人任せにできない」っていうのはどういうことでしょうか? 小泉:私たちの世代は、戦争に負けて、たった20年後ぐらいに生まれてるんですよね。その前から高度経済成長期が始まって、小さな頃から「未来は豊かになる」と思い込んで生きてきた世代です。 そして、生まれて20年後にバブルも経験して……。特に私たちの世代は、世の中のことは政治とか中枢にいる人に任せておけばいい、私たちは幸せになれるという意識が強かったと思うんです。そうじゃない人ももちろんたくさんいると思いますけど、私のような人間も多かったのかなと思うんです。 でも、そういう人たちが少し目覚めたかもっていう感覚がしたんです。世代だけじゃないかもしれないけど。あと、言っちゃいけないみたいなムードもずっとあったのかもしれない。「だって自分の人生だもんね」ということに気がついたみたいな、そういう瞬間があった気がするんです。 ―ポツポツとみんなが目覚めてきた感じはどういうところで感じられましたか? 小泉:SNSもそうなんですけど、最近だと顕著に地方自治体とかの変化を感じます。 ガチガチに構造が出来上がっているから、大きいところをいきなり変えるのはどんなことでも難しい。でも小さいところからリーダーを支えていくということは希望だなと思っています。ペヤンヌマキさんが杉並区長選のことを映画にしていて(『映画 〇月〇日、区長になる女。』)、その音楽にも黒猫同盟(上田ケンジと小泉による音楽ユニット)が参加してたりするんですけど。地方の映画館で上映してくれるようになって、ペヤンヌさんも大忙しで飛び回っていますが、そういうのがどんどん浸透していくといいなという感じがします。