《ブラジル》記者コラム=ジョブスより幸せ度が高い白寿移民 「私は世界で一番幸せな男です」
辞世の句「ブラジルで希望に満ちた九十八の春」
白寿者表彰式で家族が代理出席したうちの一人は、山田カオルさん(神奈川県)だった。彼女はちょうど99歳の誕生日の6月6日に亡くなった。この白寿者表彰に彼女を推薦した地元サウーデ文協の鈴木清ジョージ元会長と会場で話していたら、なんと「6月1日に前倒しで誕生日のお祝いパーティをしたばかり。すぐ後に出席者には直筆で感謝のメッセージを送ってくれたんです。その直後に…」とつらそうな表情で教えてくれ、別れを惜しんでいた。 山田カオルさんとは、福島県白河市による第5回芭蕉白河の関俳句賞の海外の部表彰式が3月30日に福島県人会により同会館で行われた際、最後に会った。特選に選ばれた彼女の句は「ブラジルで希望に満ちた九十八の春」というもの。 その際、本人にどんな気持ちを込めて俳句を作ったのかと聞くと、「希望に満ちた98年間だったとの気持ちを込めました。長生きさせてもらって良いことがありますね」とほほ笑んでいた。今思えばあれは「辞世の句」だった。 香川県で1925年6月6日に生まれ、わずか3歳の時、親に連れられてブラジルに移住。できたばかりのアリアンサ移住地に入植し、第3アリアンサ日本語学校で習い、小学校4年を終えた。一子供移民であり、ジョブスに比べて高学歴も財産にも縁がなかっただろうが、長寿と幸せには恵まれていた。 「ブラジルで希望に満ちた九十八の春」には、その気持ちが込められている。彼らのような高齢移民の自己肯定感の高さには、学ぶ点が多いのでは。(深)
■白寿表彰者リスト■ 西村愛子(99歳、北海道)、山下輝子(99歳、新潟県)、谷口貞江(99歳、山口県)、東民子(100歳、奈良県)、井口たき子(99歳、長野県)、田原艶(100歳)、石川義夫(102歳、サンパウロ州セラーナ市)、田中芳子(100歳、熊本県)、小柴隆俊(99歳、群馬県)、小山玉枝(100歳、熊本県)、山田カオル(99歳、香川県)、安倍チエ子(100歳、サンパウロ州プレジデンテ・アルベス市)、佐野武(100歳、静岡県)、服部馨(99歳、福島県)、田中三子(99歳、鹿児島県)、沖山スズ(100歳、サンパウロ州イグアッペ市)、菅野 野村 陽(100歳、福島県)、大山弘(99歳、福島県)、横谷眞里雄(99歳、サンパウロ州イグアッペ市)、浅井せつこ(99歳、愛知県)、柳瀬 管野 千寿(99歳、サンパウロ州バウルー市)、代田正二(99歳、長野県)、大堀よしこ(99歳、サンパウロ州グアラサイー)、上村アイ(100歳、新潟県)、鈴鹿山留(99歳、広島県)、花田 千里(99歳、サンパウロ州プロミッソン市)、坂本明(99歳、和歌山県)、木田育代(99歳、和歌山県)、船橋ミツエ(100歳、福岡県)、川崎二三男(100歳、北海道)、宮之原ヒロコ(99歳、サンパウロ州カフェランジア市)、金谷のぶ子(99歳、岡山県)、松本のぶお(101歳、静岡県)、甲斐修蔵(100歳、熊本県)、五十嵐司(100歳、東京都)、前田定信(100歳、沖縄県)