TPP 自給率低下に秘策?「こくポキャンペーン」って何/木暮太一のやさしいニュース解説
消費者メリットはどこに?
なぜ広まらないか? 「そもそもポイントを集めて応募しても、大した商品が当たらず、メリットがない」など、いくつか理由はありそうですが、根本的に考えなければいけないことがあります。 ―――「それは、何?」 それは“消費者のメリット”です。 そもそも何を買うかを決めるのは消費者です。農業関係者から「TPPに参加したら農業が壊滅する! ふざけるな!」という声も聞こえてきますが、それは「TPPに参加したら、安くていい商品が輸入されて、オレの商品が売れなくなる! ふざけるな!」と言っているのと、大差ありません。 もちろん、国全体として考え、国民の食料を確保しなければいけないという壮大なテーマはあります。ただ、あくまでも国民の利益を考えて施策を考えるべきです。 いくら「このままでは農家が潰れてしまう! 農協が潰れてしまう! 国産を買って!」と叫んだところで、多くの国民は「そんなこと知らない。自分は安くていいものを買いたいだけ」と言って去ってしまうでしょう。 資本主義経済の中で、消費者に選んでもらうためには、安くて質の高いものを提供するほかありません。どんな商売でも同じです。根本的な質・価格の改善をせずに、キャンペーンを実施しても誰からも相手にされません。広まらないのは当然です。「商品当たるから、国産品買ってね~」と言っても、誰も聞いてくれないのです。 政府としては、農業の一部も“聖域”から外し関税を下げる覚悟をしているようなので、“賽は投げられた”状態です。農業の分野には、単発のキャンペーンではなく、もっと本質的な改革を期待したいです。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。