TPP 自給率低下に秘策?「こくポキャンペーン」って何/木暮太一のやさしいニュース解説
日本は9割以上の関税撤廃か
TPP(環太平洋経済連携協定)を年内に妥結すべく、各国の交渉が大詰めを迎えています。 日本政府は、アメリカに対し、「92.4%の自由化」を提示していた、というニュースがありました。これはつまり、「 “聖域”をかなり減らし、9割以上の品目を自由に貿易するという案でいかがでしょうか?」と日本政府がアメリカに打診したということです。 ―――「いまいちピンとこないけど」 これは、これまで、日本が“聖域”と考えてきたコメや乳製品など農産品などの関税をなくす判断をしたということです。 農産品・農林水産品、その他工業品など、これまで関税を維持してきたものを、そのまま現状維持した場合、“自由化率”は9割未満になります。つまり、この“聖域”から外れるものがあるということですね。 これは私の意見ですが、政府として非常に高い“自由化率”を提示したと感じています。 もともと、TPPは自由に貿易をしましょうというコンセプトなので、高い自由化率を提案することは、ある意味当然です。 ただ、アメリカはさらに高い自由化率を求めてきそうです。これから日本側の交渉力が問われますね。 ―――「TPPが始まったら、すぐ関税なくなっちゃうの?」 いえ、そうではありません。TPPが始まってすぐに関税をなくす「即時撤廃」が65.6%、その後一定期間経過してから関税をなくす「条件付き撤廃」が26.8%のようです。
国産食品を売るキャンペーン
―――「関税を撤廃したら、外国から安く輸入品が入ってきて、日本の商品が売れなくなりそうだね。」 そうですね、安い輸入品を買えるようになれば、相対的に日本産が高くなるので、売れ行きが悪くなることが予想されます。そのため、食料自給率が低下することを危惧する声もあります。現在、摂取カロリーを基準にして計算すると、食料自給率は39%です(国民が摂取しているカロリーのうち、39%が“日本産”ということです)。 それが、TPPによって27%まで落ちるという計算もあり、農業関係者から不安の声が高まっています。 そのため国も対策を始めています。そのひとつが「こくポキャンペーン」です。 ―――「こくポキャンペーン??」 スーパーでよく見てみると、一部の国産の食品に「“こくポ”マーク」がついています。これら対象の国産食品を買うと、ポイントをもらえます。そのポイント数によって、全国の特産品が抽選で当たるという取り組みです。これは、国民がもっと国産食品を買ってくれるよう、農林水産省が支援して行っています。 ―――「へぇ~ 知らなかった。このキャンペーンって有名なの?」 残念ながら、認知度は低いです。じつはこの「こくポキャンペーン」、去年2012年から始まっていました。でも認知度は、まだ1割程度。当の国産食品を作っている農家の方でさえ、知らなかったという人もいるくらいです。 今回のキャンペーンは、2014年2月末までなので、あと4ヶ月ちょっとしかありません。このままではほとんど知られず、終わりそうです。