トランプの元経済政策アドバイザーが語った「EV補助金、ビットコイン、日米関係はこうなる」
日本では石破茂首相の新政権が誕生し、アメリカでは次期大統領を決める大統領選が大詰めを迎えている。日米関係は転換期にあるのか、あるいは、これまで通りの関係を強化するのかが、注目されている。 日米関係におけるこの重要な時期に、米証券取引委員会(SEC)の元委員でトランプ大統領の元経済政策アドバザーも務めたポール・アトキンス氏に、Forbes JAPANは東京都内でインタビューを敢行。現在日米の経済関係で懸案となっているUSスチールの買収問題から、アメリカの次期政権の対日政策、そしてAIなどテクノロジーまで話を聞いた。 (インタビュー山田敏弘) ──日本最大手の鉄鋼企業である日本製鉄による米鉄鋼メーカーのUSスチールの買収について、ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領は買収を阻止する方針を明らかにしたことが日本でも大きく報じられています。またドナルド・トランプ前大統領も歓迎しない姿勢を見せています。今後はどのように進むと考えますか? どうなるのか、まだわかりません。日本製鉄は、対米外国投資委員会(CFIUS)に書簡を送って買収計画への理解を求めたとみられます。私が知る限り、CFIUSからも厳しい反応があったようです。ただ法的に見ても、この買収プロセスが政治化されることがあってはいけない。 残念なことに、アメリカ大統領が声明を発表してしまったことで、すでに信じられないほど政治的に利用されてしまったと見ています。しかも次期大統領候補の副大統領も加わっている。本来なら、このようなことは起こらないはずだ。 大統領はアメリカの行政府の長だ。そして、行政府に属する人々が法的に公平な視点でこの取引を見なければならないのに、どうやってこの取引の是非を公平に判断できるのか。 私はこの問題についてすべての情報を持ち合わせているわけではありませんが、客観的に見ていると、大統領や副大統領が、国家安全保障の問題に基づいた冷静な審査であるべきものを、政治的に行ったことが今回の本当の問題だと思う。 ──バイデン大統領などはこの取引が安全保障の問題になると言っていますが、何をもって「安全保障」と言っているのでしょうか。 1980年代を思い出すと、当時、日本企業がアメリカやって来て、ニューヨークにあるロックフェラーセンターを購入した。アメリカの象徴的な建物が外国人に買われたとして大変な抗議の声が上がった。もっとも、日本人はロックフェラーセンターのビルを日本に持ち帰ろうとしたわけではない。 現実には、これはアメリカへの投資であり、アメリカの国家や経済、あるいは政治的な安定などに対する信頼の証でもあったのだ。私はそういう動きは歓迎すべきことであり、抗うべきものではない。 ご存知の通り、製鉄業では品質が上がっており、USスチールは競争を続けるために投資を必要とする古いラストベルト*の会社だ。新しい技術を必要としており、それを日本製鉄が提供することになる。これは素晴らしい機会になり得るし、USスチールを購入させることは有益なことにもなり得るでしょう。 *ラストベルト=鉄鋼業などの主要工業が衰退している地帯 ──米メディアによれば、米国防総省は今、USスチールから購入する製鉄の比率が3%しかないということで競争力がないようです。また労働力不足でもあると。 ですから、CFIUSによる公正な審査を通過すれば、今回の買収はみんなにとって歓迎すべきものなのです。これが成立しなければ、工場を封鎖しなければいけない可能性もある。繰り返しになるが、大統領だろうが大統領候補だろうが、この問題を政治問題化すべきではない。