ワークマンの「ファッション重視」路線は正しい戦略か? アンバサダーの視点から分析
ワークウェアの専門店として日本最大の店舗数と売上を誇るワークマンだが、近年は「ファッション重視」の戦略を進めている。 (文・山田耕史) 【画像】ワークマンの潮目を変えたアイテム
一般客をターゲットした「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」を立ち上げたのは2018年。主力の顧客層である建設技能労働者の数に陰りが見られたため、ららぽーと立川立飛に初出店したのが始まりだ。作業着のワークマンが打ち出す一般客向けの新業態ということで注目度は高く、オープン前の待機列ができるほどの反響を呼んだ。 その後、2020年には女性専用売り場を40%に拡大した女性客主体の新業態「#ワークマン女子」 を横浜桜木町駅前のコレットマーレに出店。同店では“インスタ映え”するブースを設け、「インスタ世代」の取り込みも狙った。さらに、2023年には「#ワークマン女子イグジットメルサ銀座店」を改装して「Workman Colors イグジットメルサ銀座店」をオープン。そして「#ワークマン女子」は2024年9月から出店の加速を行い、路面店の全国400店体制を目標にしている。 私は2019年にワークマンのアンバサダーに就任し、ファッションの専門家という立場から助言を行い、数多くの共同開発製品を世に送り出してきた。今回はそういった私の視点から、ファッション重視を進めるワークマンの今後を考えてみたい。
“ワークマン=派手な配色”だった
私がワークマンの製品に注目し始めたのは、2015年。冬場のロードバイク通勤で冷える足先の解消法を調べていると、ワークマンで販売しているカプサイシン入りの靴下が良いという情報を見つけ、購入したのがきっかけだった。その後、当時私が愛用していた5本指ソックスの品揃えが豊富なことをブログで紹介したところ、ワークマンのオンラインストア担当者から連絡をいただいたことが、ワークマンとの付き合いのはじまりだった。 当時、ワークマンで扱っていたウェアは100%作業着だった。作業着を「あえて」ファッションに取り入れる、ということはあったかもしれないが、製品自体にファッション性は全く感じられなかった。ワークマンの担当者も「ファッションの視点でワークマンが言及されたのは山田さんのブログが初めてだった」と語っていた。 アンバサダー就任前から私は、「デザインをシンプルにして欲しい」ということをワークマンの開発担当者に強くリクエストしていた。当時のワークマンの製品のデザインは非常に派手だった。ブランドのロゴが大きくリフレクタープリントで入っていたり、どの製品にも切り替え配色やカラーステッチなどがあしらわれており、一般的なカジュアルファッションに取り入れるのは難しいデザインの製品がほとんどだった。