ワークマンの「ファッション重視」路線は正しい戦略か? アンバサダーの視点から分析
潮目を変えたシェフパンツ
ワークマンプラス1号店がオープンした2018年頃から、巷でワークマンが話題になり始めた。とはいえ、この頃でもまだワークマン製品のファッション性は高いと言えるレベルではなかった。 だが、2021年春夏に「超撥水シェフパンツ」が発売されたあたりから、その雰囲気が変わってきた。 当時、大手セレクトショップやファストファッションブランドがこぞって発売していたトレンドアイテムのシェフパンツ。そこに、ワークマンならではの高撥水、多収納、リフレクターなどの機能を付与。それが1500円という低価格で発売され、大ヒット商品となった。この頃は既にルーズシルエットがマスでも人気になっており、オーセンティックなワークウェアらしいゆったりとしたボリュームの「超撥水シェフパンツ」は、コーディネートの軸としても充分役に立つアイテムだった。この頃になると、目立つロゴやステッチが入ったアイテムはほとんどなくなっており、カジュアルウェアとコーディネートしても違和感のないデザインの製品がかなり多くなっていた。 上述の「Workman Colors イグジットメルサ銀座店」のリリース文章には、「ワークマンが得意とする『機能性』は大きく打ち出さずともデザイン性だけでも売れる店舗を目指しています」とある。だが、果たしてワークマンに「デザイン性だけでも売れる店舗」づくりは可能なのだろうか。
ファッションのユニクロ、機能性のワークマン
同価格帯のライバルとして真っ先に挙げられるのが、ファーストリテイリングの「ユニクロ(UNIQLO)」と「ジーユー(GU)」だろう。既に「国民服」とでも言うべき地位を確立したユニクロ。ジーユーはそのユニクロの“低価格版”としてスタートしたが、現在はトレンドを取り入れた低価格ファッションブランドとして、確固たる地位を築き上げている。「ジーユーを着ていればとりあえず大丈夫」という認識を持っている人は少なくないだろう。実際に、デザインだけを見れば、ジーユーだけでも十二分にオシャレは可能なレベルになっている。 ファーストリテイリングは創業者である柳井正氏の家業だった紳士服店がルーツとなっている。つまり、最初から「ファッションの企業」だった。今も一流のファッションデザイナーとコラボレーションすることなどにより、「ファッションの民主化」を推し進めてきた。それに対し、ワークマンはファッションではなくワークウェア、つまり機能性を追求してきた企業である。 一部のスポーツウェアやアウトドアウェアを除き、多くの人はこれまで「ファッション性」で普段着を選んできた。だが、ワークマンは「低価格・高機能」を打ち出すことで、それまでほぼ高価格製品の専売特許となっていた「機能性」を民主化した。「機能性」を基準に普段着を選ぶことが、マス層にも可能になったのである。