１０月は乳がん啓発の「ピンクリボン月間」です。 女性に一番多いがん「乳がん」。 「乳がん」検診は、痛みを伴うため敬遠しがちでもあります。 患者や医療従事者の思いを通して乳がんの現状について考えます。 ＜エディオンピースウイング広島・広島城のライトアップ＞ 今月上旬、広島県内６箇所が次々にピンク色になりました。 このライトアップを行ったのは、乳がん患者と、その支援者です。 全国１７か所をライトアップし、乳がんへの関心を高めるとともに病気と闘う患者たちが上を向いて進めるよう願いを込めて、行われました。 広島城から参加した日下さんは乳がん患者です。 【難治性乳がんサポートプロジェクト アッピーチ アンバサダー・日下美和さん】 「やはり決して他人事ではない。いつでもだれでも起こりうることだと知っていただきたいと思いますし、そして、ご自身の体により関心をもっていただくようにしていただきたいと思います」 「一人でも乳がん患者を減らし、理解を深めてほしい・・・」経験者の思いです。 現在、年間およそ９万７千人に新たに見つかっている乳がん、およそ１万６千人が命を失っています。 ９人に1人の割合でなる病気はなぜ増えているのでしょうか。 【安佐市民病院 乳腺外科・恵美純子 主任部長】 「やっぱり食生活が大きいとは思いますけどね。あとは女性ホルモンの関係が大きいですかね。授乳の回数であったりとか出産の回数が少ない高齢出産というところはですね、乳がんのリスクになりますよということはわかっています。それは少なからず女性が社会で活躍しているということには関係している可能性がありますね。生活習慣であったりとかいろいろな原因は言われています。ただなりやすい年齢というのが、やはり日本人はある程度特有なものがあって、４０代～７０代ずっと多いですね」 乳がんは３０代後半に徐々に増加し、４０代から６０代がピークとなります。 その後もあまり減少せず、７０歳以降も少なくありません。 一方で、乳がんは、早期発見すれば、ほかのがんに比べ、治癒しやすいと言われていて１０年生存率は、ステージ１では９４．１％。 早期発見につながる乳がん検診が不可欠と言われています。 しかし、広島県の受診率は４２．６％。全国平均より低くなっています。 こうした中、呉市で今月から新たな実証事業が官民連携で始まりました。 呉市内の薬局に行くと… 【石井記者】 「このように薬局でケースを受け取り、ここで唾液を出して、これを提出することで検査ができるということです」 今月から始まったこの唾液検査は、乳がんのリスクを診断するもので、広島大学のベンチャー企業が開発しました。 【ミルテル・加藤俊也 社長】 「もともとがんになると、ポリアミンという物質が増えることはですね。１９７０年ごろから研究されてわかっています。唾液でもポリアミン自体が物質として出てくることが分かったので、今回唾液を用いてより簡便にできる検査として開発しました」 およそ１カ月後に渡される判定では、乳がんの疑いをＡ～Ｃの３段階で評価し、それをもとに、マンモグラフィなどの検診へ促します。 【マイライフ・佐々木拓也 常務】 「結果を見てどうすればいいんだろうというところで、お困りになるケースが出てくるんじゃないかなと思っておりますので、そこは我々専門家として、アドバイスをさせていただきながら、いろんなサポートができたらなという風に考えています。我々のこういった取り組みが検診率の向上につながればいいかなという風に考えています」 実際に受けに来たという人は…。 【テストを受けに来た呉市民】 「できるだけ痛くなくて分かるというのがあればいいなと思っています。ずいぶん痛みがないだけで足が向きます」 １２月まで、先着１０００人が無償で受けられるこの呉市の実証事業。 背景には、呉市の検診受診率の低迷がありました。 【呉市福祉保健課・要田弥生さん】 「やはり痛みが心配というところと、検査の状況によっては恥ずかしさも伴いますので、やはりハードルが高いというところがあります。そういった中で早期に発見するということが、がんは重要ですので、そういったきっかけになるようにというところでこういったことをさせていただいております」 そこで、「乳がん検診」を受けていない人などを対象にはがきを送り、リスク検査を受けるよう呼びかけました。ＬＩＮＥで登録すると郵送キッドが届き、自宅で検査を受けられる、より手軽な方法もあります。 一方、これは、「リスク検査」に過ぎず、精度も９５％程度だと言います。 【ミルテル・加藤俊也 社長】 「完璧ではないと思ってるんですね。マンモグラフィだったり、超音波を受けていただくことがすごく重要だと思っていますので、その手前の検査として気軽に受けていただいて、正しい知識を、検査をきっかけに得ていただければというところです」 では正しい知識とは？ 【安佐市民病院乳腺外科・恵美純子 主任部長】 「有効な方法というのが、はっきりわかっているのが乳がん検診で言うと、マンモグラフィをやはり４０歳から２年に１回受ける。２年の間もずっと日々、自分の乳房のことを日ごろからよく知っておいて、基本的にはセルフチェックをするわけですけれども、生理が終わったなと思ったら、お風呂でぜひ触って調べてくださいということは、お伝えしたいですね」 セルフチェックの際のポイントは指をそろえて押すこと。つまむ人が多いそうですが実は間違いです。 【安佐市民病院乳腺外科・恵美純子 主任部長】 「外側から内側に円を描くように満遍なく。自分で押したときに梅干しとか石ころみたいなものが骨じゃないちゃんと指でゆすった一緒に動くような塊があったときに『は！』と思って検診とかお医者さんに行くきっかけになりますので、日ごろの自分を知っていればなんか違うなということに気が付けると思うんですね」 ライトアップに合わせ行われたユーチューブ配信。乳がん患者の日下さんは、呼びかけました。 【難治性乳がんサポートプロジェクト アッピーチ アンバサダー・日下美和さん】 「広島の皆さんにこのピンクの光を見ていただいて、乳がんのこと考えていただきたいと思います。また今、まさに乳がんと立ち向かっている患者のみなさん、関係者の皆さん、私も今年術後無事７年目を迎えることができました。しんどいこともいっぱいあると思いますが、一緒にがんばっていきましょう」 患者がピンクの光に託した「乳がんを自分事にしてほしい」という願い。 自分の体を守れるのは、自分自身です。 ＜スタジオ＞ 【岡野キャスター】 「私は今年初めて乳がんの検診を受けたんですけれども、やっぱりちょっとそわそわと言いますか、不安な気持ちもあったんですよね。ただそれ以上に受けてよかったという安心感がありました。県内の受診率は全国平均より低いということで、気になるといいますか、心配ですね」 【コメンテーター：叡啓大学・早田吉伸 教授】（地域活性化や社会システムデザインが専門） 「なかなかちょっと怖いんで、億劫になっちゃうっていうところもあるかもしれないんですけれども、早期発見が一番重要だっていうことを３０歳、２０歳、若いときから知識としてはちゃんと入れておくってことも重要でしょうし、あとは周りの人が『検診行ったら』とか声掛けをしていくってことも重要ですよね」 自分の体のことを後回しにせず、日頃から関心を持つことも大切なのかなと思います。