精神科医に聞きました!「ママ世代のメンタル不調」…疲れの背景にあるものとは?クリニックに行く目安は?
Q:「心の水位が下がってきた」と感じたらできることはありますか?
尾林先生:先ほどもお伝えしたように、状況に応じて通院が必要になりますが、まずは、メンタルが不調に傾きかけているときには、“ちゃんと休む”ことが大切です。 でも“休む”という言葉はなんだか漠然としていますし、突然“休んで”と言われても戸惑ってしまう人も多いかもしれません。ですから、「まず、時間のゆとりを“無理やり”つくってください」と伝えることがあります。 現代社会では、時短や効率が重要視され、時間も仕事も効率的にキッチリ詰めていくことがよいとされています。象徴的なのが、コロナ禍。企業の仕事がリモートワークに切り替わり、会議を次から次へと効率よく“まわす”ようになりました。 一見、業務が効率よくまわっているように見えても、会議と会議の間の雑談や時間の余白がなくなっていきました。当時、医師の立場でストレスを抱えた現場の社員の声を数多く聞き、時間的、精神的ゆとりが排除されているように感じていました。 ゆとりを持つことに対して罪悪感を覚える人もいるかもしれません。でも、心の水位が下がっているときには、必要なものです。だから、自分を休ませるために無理やりにでも、配偶者や第三者に頼ってでも、まず時間的なゆとりを作り出してほしいと思います。 それは、自分のためではなく、家族のためにも大切なことです。
Q:心の水位が下がるのを事前に防ぐために、何かできることは?
尾林先生:さきほど「多くの場合、まず体に疲労のサインが出てから、心の症状が出てくる」とお話ししました。体の疲労を感じたときには、積極的にリフレッシュの機会を持つことが大切です。 ヨガでもピラティスでも、座禅でもなんでもいいんです。家でやってもいいし、家だとくつろげないという人もいると思います。それなら、どこか違う場所で気持ちを入れ替えに行くのもいいかもしれません。 普段やらないことをやってみる。買わないものを買ってみる。行ってみたいところに行ってみる。それらを“やること”に対して、特に“具体的な効果”を求めすぎないこともポイントかもしれません。フィットネスを実践したと仮定して「何キロやせたか」「費用対効果はどうか」ということはあまり考えずに、目標達成度や効率をあえて度外視してみるのも、やってみる上での工夫です。 そのような試みを通じて、ちゃんと自分の疲れと向き合えている、と前向きにとらえてほしいと思います。 以上、今回は『群青のカルテ』の医療監修をしている精神科医の尾林先生にママたちのメンタルの不調との向き合い方についてうかがいました。 体の疲れをごまかしながら、今日やるべき仕事や雑事と対峙せざるを得ないときもありますよね。でも、“疲れた”と感じたら、“少し先の自分”のために、いったん立ち止まって、自分なりのリフレッシュの時間を確保して欲しいと思います。