精神科医に聞きました!「ママ世代のメンタル不調」…疲れの背景にあるものとは?クリニックに行く目安は?
Q:「メンタルの不調かもしれない」ときどうしたらいい?クリニックに行く目安は?
尾林先生:心の水位が下がってしまったとき、心を許せる友人・同僚・家族などに話すことができれば、気持ちがラクになることもあります。お仕事をされている方は、上司や人事労務など会社の担当部署に相談することで、業務量や内容の調整につながったり、産業医面談を設定してもらえるケースもあります。 とはいえ、メンタル不調のときには人に会ったり、自分の心情をうまく説明できないこともあります。 もし、「自分では抱えきれない」という感覚があったら、迷わず病院を受診して欲しいと思います。 受診を考えたときに候補になるのは、おもに心療内科、精神科、メンタルクリニックの3つ。心療内科は体の不調を中心に観察しながら心の病気にたどりつくというアプローチ。精神科は心の状態を中心に診ながら、体の問題も診ていくところです。患者さんが受診しやすいように“メンタルクリニック”という看板をあげているところも増えていますが、基本的にドクターは精神科出身です。 どの看板をあげている病院を選んでも、大丈夫です。
Q:病院に行くことに抵抗感がある人もいるようですが…
尾林先生:日本では“精神科”というキーワードが後ろ暗いイメージを伴っていることは否めません。 欧米では、自分のメンタルを良い状態に保つことは必要なことであり、そのために時間やコストをかけるという感覚が根づいています。精神科医は、メンタルケアの伴走者のような存在です。一方、日本では、医師を“診断する人”、患者は“診断される人”という縦の関係をイメージする人が多いのではないでしょうか。 中には「気軽に精神科を使ってもらっては困る」という意見を持つ医師もいるかもしれませんが、病院の敷居の高さから、アクセスすべき人がアクセスできていない状況があるのは事実。まずは、自分に合う病院を探してみてほしいと思います。
Q:共働き家庭が増加しています。「働くママ」の悩みの特徴はありますか?
尾林先生:私は、企業の産業医も務めていますが、近年、女性社員の相談が増えていると感じています。もちろん、育児中の女性社員からの相談もあります。 お話をうかがっていると、悩みの内容は、仕事、夫婦関係、子どものこと、義理の親との関係、お金など、じつにさまざまです。感じているのは、 “公”の領域である仕事の悩みと、“私”の領域の家庭の悩みを切り離すのが難しいということ。 育児中の社員は、職場の仕事と、育児・家事などの家庭の仕事を常に気持ちを切り替えながら担っている状態です。でも、実際には、気持ちを切り替えながら「AからBへ」「Bを終えたらすぐCへ」と切り替えていくのって、どんな人でもかなりのエネルギーを要するんです。ましてや、職場と家庭の仕事は基本的に不連続。難易度の高い2つの異なる仕事を無理やりセットにして抱えているような状態です。 にもかかわらず「時間内に仕事を終えて、速やかに家事・育児をやればいい」というプレッシャーにさらされている人も多い。どちらの領域でも完ぺきに100点に近い高得点を目指して、ストレスを抱えてしまうこともあります。