国民皆保険も破綻、「開業医は儲かる」神話の崩壊…この国の医療はどうなるのだろうか
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
患者不足でも値上げできない
東京都の場合には公共交通機関が発達しているため、患者は自分が受診したい医療機関をかなり広域なエリアの中から選ぶことが可能だ。このため「患者不足」となる診療科では患者の争奪戦や抱え込みも起きることだろう。 人口が急激に減るわけではない23区内の医療機関であっても、経営的に苦境に立たされて廃業に追い込まれるところが出てきそうだ。 ちなみに、東京商工リサーチによれば、2021年の一般診療所の倒産は22件で前年から倍増した。コロナ禍による受診抑制や、テレワークの定着によるオフィス街の患者の減少が大きな要因だ。 これら「不況型」は15件で診療所倒産の約7割を占める。コロナ禍が完全に終息したとしても、「患者不足」となる診療科の診療所では収入が先細りとなる可能性が大きい。 患者数に比べて医師が多すぎる時代となれば、「開業医は儲かる」といった"神話"も崩れるだろう。 日本の医療機関の大半は保険医療を行っており、診察行為は診療報酬で値段が決まっているため、患者不足が深刻化したからといって他業種のように「値上げ」で対応することはできない。 そうした中、自由診療に活路を見出そうという動きがすでに出始めている。日医総研のレポートによれば、美容外科が絶対数こそ少ないものの増加が顕著だというのだ。 とりわけ東京23区における35歳未満の医師にその傾向が強いとしている。若手医師が美容外科を選択するというのはこれまでほとんど見られなかったことである。 東京23区の美容外科では、同じく増加の著しい皮膚科医が診察を行っているケースは少なくなく、自由診療に流れる傾向は今後も拡大しそうだ。