根深い真相。なぜレスリング協会で再びパワハラ問題が起きたのか?
観戦チケットの販売抽選の申し込みが始まり、2020年東京五輪への期待が高まり始めたが、日本のスポーツ界には積み残された課題が山積みだ。なかでも告発が相次いだパワーハラスメントを繰り返す環境の改善が進んでいない。5月10日にNHKが「日本レスリング協会の広報委員男性がパワハラ 委員を辞任」と報じたことで明るみに出たレスリング界の“不祥事”の一件は、伊調馨選手に対するパワハラが公表された後に起きた内容も含んでおり、同協会のパワハラが根深い問題であることを証明する形になってしまった。 NHKの報道によると「協会からホームページ作成などの業務を委託された会社の代表で、協会の広報委員会の委員を務めていた男性が、業務を再委託した同じ広報委員を務める女性に対し、立場を利用して圧力をかける ようなメールを送ったパワハラに該当するケースが7件」という事例だった。これらはレスリング協会からの公式な発表ではなく、関係者からの情報提供によってもたらされた内容だとも報じられた。 記者クラブに加盟しているNHKなのに、なぜ関係者情報なのか? それは、今回のパワハラに関する調査報告書や、5月7日になされた理事会の決定について、日本レスリング協会としては公式発表も記者ブリーフィングもしておらず、今後もする気配がないからだ。とはいえ、2018年10月に設置された内部通報窓口を活用した第一号事例であるにもかかわらず、決定を伏せるのは不自然だと考える関係者は少なくない。そういった疑問を持つ関係者から情報が提供され、今回の報道に至ったとみられる。 伊調馨選手に対するパワハラが社会問題として連日、盛んにニュースや情報番組で取り上げられ続けた時期に、このような問題が起きたことは深刻にとらえるべきだろう。 今回の事例について、解決のために具体的な働きかけがあったと最初に耳にしたのは、昨年の夏のことだった。パワハラの具体的事例として認定されたメールだけでなく、様々な場面で元広報委員男性による被害者の女性へのパワハラ的な度を超した言動は、多くの人が目撃してきた。 とくにメールの内容は酷いもので、実は私も該当メールの一部を閲覧させてもらったことがあるが、仕事依頼のビジネスメールとして、あまりに威圧的な文面と内容であることに驚かされた。もし、一般企業で上司が部下にこのような内容のメールを送ったら(あり得ないほど酷かったが)、即刻、問題になって少なくとも譴責処分は免れないのではないか。