料理人・笠原将弘 39歳で亡くなった妻の闘病生活と「3年間3人分作り続けた子どもの弁当」長男の感想に「お前、めんどくせぇな(笑)」
── (笑)。それも楽しいコミュニケーションにも見えます。お弁当の感想は直接言われるんですか? 笠原さん:俺は帰るのも遅くて子どもたちと生活リズムが違うから、弁当の感想はグループLINEで。家族のLINEがあって、あれは便利だね。長女は食べているところの写真を撮って送ってくれて、嬉しかった。長男は、言い方はムカつくけど、「笠原のお父さんが作ったんだから美味しいだろ」って言って仲のいい友達に全部食べられちゃったということも言ってましたね。
── さぞかし美味しいお弁当なんでしょうね。 笠原さん:それが、そんなにおしゃれなやつじゃなくて、本当にごく普通の弁当でしたよ。ウインナーとかも入れて。そういう方が子どもには喜ばれるからね(笑)。 ── 家族それぞれ別なところにいても同じものをいただくって素敵ですね。 笠原さん:どんなに遅くに帰ってきても、朝弁当を作っているときだけは、子どもたちのことを考える時間だった。「どんな友達と食ってんだろうな」とか、「そろそろ彼氏できたのかな」とかね。振り返ってもいい時間だったと思いますよ。
── お子さんと、恋愛の話もされるんですか? 笠原さん:うちは結構します。娘が高校生の時に「彼氏できたら言えよ」って話はしていたんで、一応、子どもたちから報告があるんです。 ── 多感な時期に、父親に打ち明けるとは仲のよさが伝わってきますね。 笠原さん:うちはカミさんが亡くなってるから俺に言うっていうのもあるんじゃないかな。反抗しようにもあんまり俺が家にいないもんだから、「すごい反抗期が来たぞ」って感じは誰もなかった。でも長女は、高校生のときに彼氏ができてから門限を破るようになって。長女とは門限のことでちょっと言い合いになるようなことはあったけど、次女と長男はそんな感じはなかったな。
── やはり、父親としては心配で。 笠原さん:まだ当時は高校生だから門限のことは言ったけど、俺はどっちかっていうと、子どもたちは小さい時に母親を亡くして寂しい思いをしているだろうから、できる限り楽しい人生を送ってほしいって思ってるんだよね。 恋愛もそうだけど、彼氏や彼女ができたら、守ってくれる存在がいるって安心だなって気持ちがある。よっぽどひどいやつじゃなければ、結婚も早くていいと思うし、孫の顔というのも見てみたい。だから、子どもたちにはそういう存在がいてくれたらいいなと思いますよ。
PROFILE 笠原将弘さん 1972年、東京生まれ。焼鳥店を営む両親の背中を見て育ち、幼少期からさまざまなセンス、技、味覚を鍛えられる。高校卒業後、「正月屋吉兆」で9年間修業後、実家の焼鳥店を継ぐ。店の30周年を機にいったん店を閉め、2004年9月、恵比寿に自身の店「賛否両論」を開店。私生活では、ビールをこよなく愛する3児の父。 取材・文/内橋明日香 撮影/CHANTO WEB NEWS 写真提供/笠原将弘
内橋明日香