料理人・笠原将弘 39歳で亡くなった妻の闘病生活と「3年間3人分作り続けた子どもの弁当」長男の感想に「お前、めんどくせぇな(笑)」
世の中的にはシングルファーザーって言われるけど、家にずっとお義姉さんがいてくれたから自分ではそうは思っていなくて。お義姉さんは、夏とかお正月は沖縄に帰っていたけど、基本的には同居してずっと一緒に住んでくれていたんですよ。 ── これまで「妻が生きていたら」と思ったことはありましたか。 笠原さん:俺も高校生のときに母親を亡くしているんだけど、親父が自分にしてくれたことはわかるから、男の子の育て方はなんとなく想像がついた。でも娘2人のことは、根本的にどうやって育てるもんなのか、わからなかったよね。
普通はお母さんに打ち明けるようなことを娘たちは言えないのかと思うと、可哀想なことしたなって。聞かれたらきっと答えだろうけど、たぶん俺に聞いてもわからないだろうから、言ってこなかったこともあると思う。でも本当にそこは、お義姉さんがいてくれたから助けられた。特に娘2人のことは、いろいろと悩みを聞いてもらっていたと思いますよ。
■長男の高校入学で始めた3人分のお弁当作り ── お子さん3人のお弁当を作っていた時期があったそうですね。
笠原さん:運動会とか、行事の際の弁当は必ず作るようにしていたけど、どんどん仕事が忙しくなっちゃって、家のことがおざなりになってきた。長男が高校に行くときに、「もう弁当を作るのもこれで最後なんだな」と思ったら、なんか急にやってやろうと思ってね。長男の高校3年間の弁当は毎日作った。長女は社会人で、次女は大学生だったんだけど、弁当って1つ作るのも3つ作るのも一緒だから、「もしいるなら作るよ」と聞いたら、「いる」とことだったんで毎朝3つずつ作ってましたよ。
── お弁当の反応はいかがでしたか。 笠原さん:娘たちはやっぱり、美味しいって。でもね、長男は好き嫌いが多いし、ガキだからわりかしいろいろ言ってくるんだよね。野菜もこっちはよかれと思って入れてるのに、「野菜は好きじゃない」とかさ。今のような時期に、うなぎを入れてやったらそれも気に入らないらしい。俺はご飯の上におかずがのっけてあって、味が染みたようなのが好きなんだけど、長男はおかずとご飯が混ざるのが嫌なんだと。だからおかずはカップに入れてくれとかね。手羽先を入れたときは、食べる時に手が汚れるとも言われた。長男には、「お前、めんどくせぇな!」とよく言ってましたね(笑)。