はやぶさ2最後のミッション JAXA会見(全文3)ローバーの名は「ウルラ」
津田プロジェクトマネジャーのコメント
久保田:それでは19ページに移りたいと思います。今回のターゲットマーカーの分離、それからMINERVA-II2ローバーの分離、軌道周回運用につきまして、プロジェクトマネジャーの津田よりコメントが出ておりますので、19ページですが、読み上げさせていただきます。 小惑星の周りに物体を周回させるアイデアは「はやぶさ2」の開発当初、2012年度、「はやぶさ2」プロジェクトのアストロダイナミクスサイエンスチーム、アストロダイナミクスというのは日本語で言いますと宇宙航行力学になりますけれども、そのサイエンスチームの議論の中で生まれました。タイトな開発計画の中、「はやぶさ2」計画に組み込むことはできませんでしたが、研究課題として地道な研究活動が継続していました。 このように事前検討のあったターゲットマーカー軌道周回と、MINERVA-II2ローバーの軌道周回化を組み合わせることができ、MINERVA-II2ローバーに新たな役割を与え、重力サイエンスの成果を高められるというアイデアの発案には、アメリカ、コロラド大学ボルダー校、ダニエル・シアーズ教授および、そのグループ、それから宇宙科学研究所、川口淳一郎教授に深く関わっていただきました。このローバーの使い方の大きな方針転換を英断した大学コンソーシアムの積極的な貢献がありました。
電波が受信できたのは大きな幸運
以上、経緯含めてでございますけれども、3段落目になりますが、分離後のMINERVA-II2ローバーから電波が受信できたのは大きな幸運でした。また、その電波には測距信号が含まれています。測距信号というのは通信をするだけではなくて、距離情報も持っているという意味でございます。これらの電波信号と、「はやぶさ2」から観測した軌道周回中の2つのターゲットマーカーと、MINERVA-II2のローバーの画像観測データを集約することで、これまでにない新しい重力場計測手法を確立することができました。津田プロマネからは、「小天体まわりの史上最小の人工衛星群」という意味では世界初の快挙となります、というコメントでございます。 MINERVA-II2ローバーの窮地を転じて成果に変える計画を素晴らしいチームワークで立案できたこと、それに加えてMINERVA-II2ローバーもよく機能してくれたことには、私自身「はやぶさ2」の在り方を象徴しているようで大変、感慨深く思います。このような臨機応変、かつイノベーティブな科学を「はやぶさ2」で実現できたこと、それを実現した「はやぶさ2」ミッションチーム、アストロダイナミクスチーム、東北大を含む大学コンソーシアム、コロラド大学ボルダー校の関係者に深く感謝いたします。 以上のコメントをもらっておりまして、背景と、それから謝意をプロマネからもらっております。