3浪で東京藝大に合格。家庭環境の変化で「音楽を諦めた」彼女に訪れた“運命の出会い”
落ちるとは思っていたものの、実際に落ちたことで悔しい思いをした石橋さんは浪人を決意します。浪人した理由について聞くと、「1年で入れるレベルではないとわかっていたから」と話してくれました。 ■アルバイトをしながら浪人をスタート 「最初から浪人するつもりで『アルバイトしながら受験勉強をがんばります』とは両親に伝えていました。両親は藝大の受験を経験していないため、レベル感がわからなかったと思いますが、『藝大は狭き門だし、そんなにすぐに入れない』と、理解を示してくれたのがありがたかったです」
こうして1浪に突入した石橋さんは、現役のときと同じようにレッスンに通いながら、小学校時代、中学校時代の先生が新たに赴任した学校の吹奏楽部を手伝いに行きました。 その当時のスケジュールは、週3~4回スーパーでのアルバイトを午前9時~午後1時までこなしてから、学校でお手伝いをしたり、レッスンに通って、練習を続けていました。 「先生方が学校に呼んでくださったおかげで、音楽的な関わりを持ちながら、練習できる環境をもらえたのがありがたかったです。自宅でも、小太鼓の形をした消音の練習台を叩いて、ひたすら練習していました。でも、この年も音大受験生とのつながりはなく、ノウハウを得ることができなかったので、藝大は1次試験で落ちてしまいました」
この年は私立の音楽大学も受験して合格しましたが、学費が高かったこと、通学時間が長かったことに加えて、藝大に行きたいという思いが忘れられずに入学を辞退します。 「なぜかポジティブで、すぐ2浪目もしようと思っていた」石橋さんは、切り替えてまた訓練の日々を再開します。 しかしこの年、石橋さんの家庭に大きな変化がありました。 「2浪目の4月か5月くらいに、不況の煽りを受けて、父親が会社を早期退職しました。それで父は事業を立ち上げたのですが、経済状況がさらに厳しくなり、レッスン代を捻出できなくなったんです。