3浪で東京藝大に合格。家庭環境の変化で「音楽を諦めた」彼女に訪れた“運命の出会い”
こうして東京藝術大学を第1志望に設定した石橋さん。ただ、高校2年生で藝大を志望する決断は、高1の段階で対策をはじめている周囲の藝大志望の生徒たちに比べると遅かったようです。 「受験に向けて、ひたすらレッスンに通い、自分が苦手なところを潰しました。ただ、藝大受験はノウハウが大事で、ちゃんとした先生に教わらないと合格するのに必要な要素はわからないまま。私の周囲には音大や藝大を受ける人がいなくて、どの先生に教わればいいかも知識がなかったので、ノウハウがわからないままずっと練習していました」
■舞い上がって失敗した現役の受験 東京藝術大学・音楽学部器楽科打楽器専攻(2024年度)の入試は、以下の通りです。 1次試験:専攻楽器の基礎的な能力を見る(例:楽譜の中の試験範囲を試験1カ月以上前に提示され、それを演奏する) 2次試験:専攻楽器の応用能力を見る(選曲の難易度が上がる)、初見視奏(初見の楽譜を指定された打楽器で演奏する) ※石橋さんが受験した2002年度入試は、自由表現(任意の打楽器を用いてその場で演奏する)もありました。
3次試験:副科ピアノ(当日指定された音階を弾く。課題曲から一曲選んで演奏する)、新曲視唱(置いてある楽譜の曲を歌う)、聴音(流れてきた音楽を楽譜に書き起こす試験)楽典(音楽的な筆記試験)、小作文(音楽家に絡めた作文。例:「現代にバッハが生きていたらどのような曲を依頼するか」)、面接、学科(大学入学共通テスト):2教科 国語・外国語 「基本的な叩き方はわかるけど、それを曲にどう反映するかを何も知らずに、ずっと練習していた」と語る石橋さん。
高校3年生になってから週1回だったレッスンを週2回に増やしましたが、8月に部活を引退するころにはもう「現役では受からない」と覚悟していました。 「たくさんのことをいっぺんにできる人間ではないので、浪人する気持ちでいました。現役の受験は藝大1本でしたが、舞い上がっていましたね。試験会場に小太鼓を持って入ったのですが、入れると音が出る『響き線』という部品が直前に切れてしまったんです。 普通は修理する道具を持っているのですが、それも持っていなくて……。急遽藝大の楽器を借りて演奏したのですが、もう何も覚えておらず、1次試験であっさり落ちてしまいました。落ちて初めて、悔しいと思いました」