JR東海の丹羽俊介社長、リニア開業で社会経済を活性化 地元と「丁寧に対話」 My Vision
■雨に強い新幹線
――大地震や水害など災害が続いた
「ここ数年、これまでに経験したことがないような強く、長い雨が降るようになった。24年は東海道新幹線も運休が相次いだ。沿線の土木構造物のうち4割以上が盛り土。現在、愛知県小牧市の研究施設で、1時間当たり雨量最大200ミリの、日本記録を超える豪雨を再現して盛り土の実験を行っている。また24年から営業路線の盛り土の(水の分布を把握する)モニタリングをしており、データが取れている。雨に強い新幹線にしていきたい」
――24年は初めて、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)も発出された
「南海トラフ地震は、東海道新幹線が通っている場所のそばで起きるのではといわれている。究極の災害対策はリニア中央新幹線の開通だ。大規模災害への抜本的な備えになる」
■リニア、一歩一歩
――静岡県知事が代わり、まだ着工できていない静岡工区をめぐる協議が進展した
「地元との対話が非常に頻度高くできた。大井川の水資源、生態系への影響など(協議する)28項目について、プロセスは確実に進んだ。引き続き、地元の方々に丁寧にかつスピード感をもって対話を重ねたい」
――改めてリニアの意義とは
「日本の大動脈輸送が(新幹線と)二重化され、社会経済が活発化する。イノベーションの創出にも役立つ。人は膝を突き合わせて話をすることで、いろいろなモノを作り出す。縁の下の力持ちとして支えていくのがリニアだ」
「ネットが普及しだした1990年代。鉄道は衰退するのではないかという人もいたが、むしろ移動のボリュームは増えている。情報通信技術と移動は両立する。よりリアルのモビリティの役割は高まるだろう」
にわ・しゅんすけ 1989年JR東海。人事部長、広報部長、総合企画本部長、副社長などを経て、23年4月から現職。愛知県出身。東大法卒。59歳。
編集後記
トランペットをたしなみ、社内の吹奏楽団に2008年から参加。車両や線路の整備士など現場の職員らとともに演奏し、建設中のリニア中間駅などでコンサート活動を続けている。PR動画を見ると「社長」のクレジットはなく、あくまで一団員として出演していた。「周りがどう見ているかはわからないが、仕事を離れ、音楽という違った形で交流し接点を持つとてもいい機会。時間が許す限り続けたい」と話す。コロナ禍では20~30代の若手とも話し合いの場を作り、打開策を練った。令和の経営者らしく柔和な物腰だが、コミュニケーションを重視する昭和の経営者の姿も重なってみえた。(織田淳嗣)