JR東海の丹羽俊介社長、リニア開業で社会経済を活性化 地元と「丁寧に対話」 My Vision
JR東海の丹羽俊介社長は10日までに、産経新聞の取材に応じた。日本の大動脈輸送を担う東海道新幹線の機能強化を進める一方、2030年代にも品川-名古屋間の開業が見込まれているリニア中央新幹線の工事を巡って、地元と丁寧に協議を重ねる考えを示した。 ――25年の展望を 「大阪・関西万博が開かれ、多くの方に東海道新幹線をご利用いただけると思う。収入面でも一定の期待ができる。05年の愛知万博も長期にわたり多くの方が移動された。足元ではインバウンド(訪日外国人)が増加している。災害で運行が乱れた際にも適切な情報をタイムリーに外国語で届けられるようにするなど、ストレスなく利用できるようにご案内を強化していきたい」 「新型コロナウイルス禍でビジネス客が減ったものの、ペースはゆっくりではあるが回復してきている。ビジネス以外では(アニメなどの好きなキャラクターを応援する)『推し旅』にも力を入れて取り組んでいる。だいぶメジャーなコンテンツと提携できるようになってきた。当初は『新幹線と組んで何がメリットか』と懐疑的なコンテンツホルダーが多く門前払いを食らうことが多かったが、成功例を積み重ねてきた」 ■苦境からのプロレス ――推し旅もコロナ禍で生まれたサービスだ。やはり打撃は大きかったか 「初めて緊急事態宣言が出た20年4月、新幹線のお客さまが前年同月比で1割まで減った。想像だにしなかった光景だった。当時私は総合企画本部長として、経営計画に携わる立場で、一般の社員とともに対応を考えた。社内でアイデアコンペも開催し、新幹線を車両ごとに貸し切るアイデアの応募があり、それをビジネスにした。苦境の中、何とかしたいという思いから現場から出てきたアイデアだ。車内でプロレスをする新幹線などが話題になったが、多様な需要に対応できる商品として今も続いている」 ――日本のモビリティの将来像のイメージは 「ウェブ会議が普及してどうなるかと思ったが、皆さん外に出て、生き生きと動き、鉄道を利用される。動いて誰かに会いに行くことは、人間のとても強い欲求なのだと思う。コロナを通じて『モビリティ』について考えさせられた。多様な移動需要に対しては、多様なモビリティの手段が必要で、将来は今よりさらにいろいろな形の移動スタイルができるのではないかと思う」