【F1メカ解説】ライバルに追い付かれつつあるレッドブル、リヤウイング翼端のトレンドに新たな風を吹き込むか
F1では、特定のチームが革新的なアイデアを持ち込んだ際、それがライバルチームによってコピーされてさらに進化を遂げていくという流れが常だ。リヤウイングのフラップと翼端板(エンドプレート)が一部切り離されたような形状となっている“セミデタッチ・リヤウイング”もその一例と言える。 【ギャラリー】ウイングといったら忘れられない……1997年のティレルが投入した「Xウイング」 各チームは2022年からの現行レギュレーションによって失われたリヤ周りの空力効果を取り返そうと模索してきた。その中で生み出されたのが、エンドプレートとフラップの接合部にテコ入れをするという案だった。それによって翼端渦をコントロールし、ダウンフォースの増加と空気抵抗(ドラッグ)の低減に繋げられることを彼らは理解していたのだ。ただ、これはマシンのパフォーマンス向上には寄与するが、後方を走るマシンは乱流を受けることになるため、”接近戦を増やす”という現在のレギュレーションの意向に背くものであった。
■“セミデタッチ・リヤウイング”の元祖
昨年はアストンマーティンとアルピーヌが先陣を切って、この新たなソリューションのリヤウイングを持ち込んだが、ライバルたちはそのポテンシャルを明らかに見抜いていた。そのソリューションが生まれて1年が経過。現在ではその開発の方向性も変化を見せている。 現在のリヤウイングで“王道”と言えるのが、アルピーヌのデザインを核としたもので、翼端板とフラップの接合部の裏側に金属製のブラケット(金具)が取り付けられている。しかしながら各チームは設計と改良を繰り返すうちに、接合部付近の形状やフラップ先端の形状を変化させた。これらを最適化することで、トレードオフの関係にあるダウンフォース増加とドラッグ低減を促進しようとしている。
■成績低迷も、細かな変更を繰り返すキック・ザウバー
ザウバーはモナコGPとカナダGPで新しいリヤウイングを投入した。彼らはウイングを支えるピラー(支柱)を2本から1本に減らしている。そして興味深いことに、その新型ウイングはモナコとカナダでデタッチ(分離)の仕方が異なっていたのだ。カナダのローダウンフォース仕様はアルピーヌの形状と似ている一方で、モナコのハイダウンフォース仕様はアストンマーティンのデザインを踏襲していると言える。