秋野央樹、電撃移籍の真実。なぜ愛するV・ファーレン長崎を離れたのか。「まさか…」願望が現実に変わった瞬間【コラム】
●一度は戦力外…。どん底から這い上がるきっかけは?
現役続行を望んでトライアウトにも参加。関心を示してくれたクラブと交渉に入ろうかという矢先に、自身を不必要と判断したファビオ・カリーレ前監督が辞任。柏レイソルの下部組織、そしてトップチームで指導を受けた下平隆宏氏の新監督就任が濃厚になった状況で、秋野もアクションを起こした。 代理人を通じて再契約を逆オファー。交渉はスムーズに進み、愛着深い背番号17を再び背負った秋野は長崎で3度目となるキャプテンに就任。J2リーグ戦で36試合に出場し、プレー時間も2864分を記録。左足から放たれる高精度のキックと、ボランチとしての的確な状況判断力が福岡の目に留まった。 「怪我でほとんどプレーできなかった時期も長かったし、トライアウトも経験して一度はどん底を味わうなど、いろいろなものを経験してきた身としては、日本で一番上のリーグであるJ1のチームにいられるこの状況は、J1でプレーしている他のどの選手よりも価値があるものなのかな、と感じています」 大怪我や戦力外通告を含めて、どんなに困難に直面しても絶対に下を向かなかったからこそいまがある。自らの強い意思と実力で、実に6シーズンぶりにJ1の舞台でプレーできる道を切り開いた秋野は、ともに23歳のボランチ、松岡大起と重見柾斗と切磋琢磨する新シーズンへ早くも胸を躍らせている。
●新たな背番号「15」にかける思い
「彼らとはボランチとしてのタイプが違うし、キャラクターも違う。そのなかで何がいいとか、誰がいいとかではなくて、各々がもっているいい部分を出しながらお互いに刺激し合って、いい競争ができたらと思います。僕も大起や重見からいろいろなものをたくさん盗みたいと思っているし、彼らも僕から盗めるものもあると思うので、いい競争をしながら、チームにいいものをもたらせたらと思っています」 新天地での背番号は「15」に決まった。FWウェリントンが「17」をトレードマークにしている関係で、クラブ側から提示された複数の候補のなかから選んだ番号には、秋野の決意と覚悟が反映されている。 「いままでつけた経験のない新たな気持ちで、という意味を込めました。自分は決してアスリート能力が高い選手ではないけど、それでも何歳になっても成長できる、J1でもプレーできると示していきたい」 初練習に続いて福岡市内で開催された新体制発表会で、秋野は今シーズンの目標に全試合出場と、そのためのコンディション管理の徹底を掲げた。新天地で輝く姿が、古巣・長崎へのエールにもなる。 20日からは宮崎県内でのキャンプに移り、トレーニングの強度をさらにあげていくなかで、攻守両面でアグレッシブさを求め、敵陣でプレーする時間を増やしていく金新監督のスタイルで確固たる居場所を築きあげていく。 (取材・文:藤江直人)
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