秋野央樹、電撃移籍の真実。なぜ愛するV・ファーレン長崎を離れたのか。「まさか…」願望が現実に変わった瞬間【コラム】
●「この気持ちに嘘は…」
「僕は長崎をJ1へ昇格させることが自分の使命だと常に言い聞かせて全力で闘ってきました。プレーオフの仙台戦、終了直後。来シーズンも僕は長崎で戦う、このクラブを絶対に昇格させると決めていました。このクラブが僕自身にとって大切な存在だからです。 しかし、このような決断に至りました。本当に悩みに悩んで悩み抜きました。長崎へのこの気持ちに嘘はありません。自分勝手な行動をとってしまうこと、昇格を成し遂げる前にクラブを離れる事をどうかお許しください」 長谷部茂利前監督(現・川崎フロンターレ監督)のもと、不動のボランチとして君臨してきた前寛之がFC町田ゼルビアへ移籍した福岡は、精神的な支柱も担えるボランチを探していたなかで秋野に白羽の矢を立てた。 もっとも、ここで素朴な疑問が頭をもたげてくる。福岡からオファーをもらったときに、秋野はなぜ「まさか」と感じたのか。答えは長谷部前監督の後任として就任する金明輝新監督の存在にあった。
●「アビスパからオファーがきたらと…」
「明輝さんがサガン鳥栖で指揮を執っていたときに長崎と練習試合を何回かさせてもらったなかで、そのときに明輝さんのサッカーの印象はすごくいいものがあったので。本当に内心ですけど、アビスパからオファーがきたらとシーズンオフに入ってから思っていたところで、本当にオファーがきたので」 心の片隅で抱いていた願望にも近い思いが、現実のものになった驚きを振り返った秋野は、今月6日に福岡市内で行われた、新体制下での初練習を終えた後には「本当に素晴らしいクラブに加入できたと感じています」と言葉を弾ませた。金監督のサッカーの何に魅せられていたのか。秋野が続ける。 「まずは選手たちの立ち位置が、対戦相手としてすごくやりづらい印象がありました。ボールを奪いにいったら背中を取られるし、いかなかったら逆に前進されてしまう。囲碁や将棋でちょっと理詰めにされている感じがしましたし、そこに攻守両面におけるアグレッシブさも加わってくるので」 昨年のいまごろは、秋野は選手生命の危機に直面していた。右足首を痛めて手術を受けて、復帰後には今度は左太ももを痛めて再びメスを入れた影響により、2021シーズン以降の3年間でリーグ戦出場が28試合にとどまっていたなかで2023シーズン後に戦力外を通告され、一度は長崎に別れを告げたはずだった。