ハニーズはオフィスカジュアル最強ブランド? 独自の最適化ノウハウ
店舗ごとに最適な商品を提供する秘訣
時代に合わせた訴求方法を確立してきたハニーズだが、地域に合わせた訴求も行っている。 大内氏は「都心と地方で店舗内のブランドの構成比は異なる。ビジネスパーソンが多いところは、グラシアのオフィスカジュアルを多く展開するなど、店舗ごとの客層に合わせた展開を行っている」と話す。 そのために欠かせないのが、店舗に対して2カ月に1回行う要望確認だ。「自店舗に一番合うように、店内のブランドの構成比に強弱をつけてもらう。常にその店舗にとって最適な在庫状況を維持している」(大内氏) また、店舗がユーザーの声を収集し、それを本社が吸い上げる体制も整備している。自社ECサイトのレビューや問い合わせフォームなどから出た意見とも総合し、ユーザーの声を商品に反映する。 「ハニーズの商品が買いたかったが、サイズが合わず、買うことができなかったという意見が重なった時期には、型紙を調節して意見に応える大掛かりな対応もしている」(大内氏)と言う。 ●高い生地で安い服を作る 自社で完結する強み ユーザーの意見を素早く吸収するハニーズの根幹にあるのは、独自のビジネスモデルだ。 大内氏によると、「ハニーズは、自社で企画、製造、販売を担っている。自社でパタンナーやグラフィックデザイナーを抱えている上に、一般的なアパレルブランドのようにブランドと工場の間に商社やメーカーを挟まず、直接工場とやり取りする」。 直接工場とやり取りすることは時間短縮になる上に、中間マージンが発生しない。「削減したコストの分、高い生地を購入していて、通常なら1万5000円の商品に使われるような生地を、数千円の商品で使っている。このようにして、今回バズったきっかけになった高い品質を保っている」と大内氏。 特にミャンマーには自社工場を構え、中国の生地屋と直接取引をした生地をミャンマーに送っている。1985年に福島県いわき市に造った自社工場で培ってきた経験が、生きていると言う。 「工場では、同じデザインを長く縫えば長く縫うほど丁寧に縫えるようになり、採算が合う。しかし、長く縫いすぎるとトレンド性を失ってしまう。ハニーズ自社工場では、小ロット多品種でありながら、1デザイン最低25日生産するルールを継続している。これによって、品質の向上と利益を生む体制が両立できる」(大内氏) 工場だけでなく、物流を把握していることも強みだ。 一般的なアパレルブランドは、海外の工場で作った商品を日本まで運び、日本の物流センターで各店舗へ振り分けている。それに対し、ハニーズの商品の70%は、工場のある各国でアソート(発送先の店舗が必要としている商品を、複数種類まとめて箱詰めしたもの)を組み、直接店舗に配送する仕組みだ。 このようにすることで、東京港に到着した在庫を、一度ハニーズの物流センターがあるいわき市に集め、そこから全国の店舗に振り分けて配送する行程を省くことができる。大内氏によると「CO2や人件費、運賃などを削減できる」。 一方、いわき市の物流センターは、商品の残り30%にあたるソリッド(色別、サイズ別に商品を箱詰めしたもの)を保管し、全国の店舗から1枚売れるごとに1枚補充する役割を担っている。 ハニーズは無駄を省いたビジネスモデルによって、ブランドコンセプトである「高感度・高品質・リーズナブルプライス」を実現している。
品田 彩華