人を殺めた中国の元死刑囚、納棺師となり遺体に向き合う 出所後定職に就くのは困難、経済発展から取り残された元凶悪犯の今
▽犯罪増加、刑務所の質低下 今、中国では刑事事件の犯罪者数の増加が止まらない。政府は殺人や誘拐といった凶悪犯罪が減ったとして「安全は世界最高水準」とアピールするが、治安対策のための摘発強化や詐欺を中心とした組織犯罪の増加を背景に、刑事裁判にかけられた人は20年前に比べ倍増した。刑務所の過密化や運営の質の低下を危ぶむ声も出ており、再犯を防ぐ更生の役割を十分に果たせないのではないかとの懸念が出ている。 「わが国の犯罪率は世界最低だ」。最高人民検察院(最高検)幹部は2023年、過去20年余りで扱った事件のうち凶悪犯罪の割合は大幅に下がり、軽犯罪が大半になったとして「99%の人民が安心と感じている」と誇った。 中国政府は近年、国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投入し、治安や秩序を脅かしたとして摘発される人が増加している。一方、サイバー犯罪や特殊詐欺など組織化された複雑な犯罪も増え、刑事裁判で審理された人数は2001年の約74万人から21年には170万人超にまで膨らんだ。
日本で2000年代に刑法犯の認知件数が減少したのと対照的に、中国では右肩上がりが続く。 受刑者の増加で刑務所は逼迫気味だ。中国メディアによると、1人の刑務官が受け持つ受刑者数は8~10人と定められているが、現状は25~30人程度となっている。1人で100人を受け持つ例もあり、人手不足が深刻化している。 また受刑者を無断で減刑したり、刑期を終えたのに釈放しなかったりとずさんな管理実態も最高検の調べで判明している。傅さんは「再犯者の7割は重罪を犯した出所者です」と指摘する。就業に向けた元受刑者の教育を含めて「社会復帰に必要な環境整備が急務だ」と訴える。