人を殺めた中国の元死刑囚、納棺師となり遺体に向き合う 出所後定職に就くのは困難、経済発展から取り残された元凶悪犯の今
弁護士の傅広栄さん(70)を代表とする元受刑者の職業訓練を行う団体の存在は知っていた。出所後すぐに、住まいを含め身の回りのことで面倒を見てもらったが、居心地が悪くなって「一人で挑戦する」と言い残し離れた。 しかし2年以上にわたり誰からも必要とされず、逃れられない「犯罪者の烙印」に挫折して、傅さんの元を再度訪問した。勧めに従い納棺師の勉強を重ね、昨年、支援を受けて高齢者住宅近くで葬儀業を始めた。 酒と水を含んだ布で全身を清め、髪の毛や爪をきれいに整える。遺族の悲しむ声が部屋に響き渡る傍らで、死後の世界に旅立つ準備を進めていく。独居で寂しさを抱えて亡くなった人。家族に囲まれて穏やかな表情で旅立った人。どういった人生を送ったのか、曹さんは死に顔から推測できるようになり、人の「尊厳」を学んだ。 殺人という背負った十字架に「後悔はない。と言うよりも後悔しても何も生み出すことはできない。だが悔いを改めることはできる」。
▽社会の差別、実母のような支援 中国遼寧省で焼き肉店を妻と切り盛りする馬瑞さん(51)も過去に殺人事件を起こした。経営していた飲食店に男たちが毎日のように地代の請求にやって来て、断ると嫌がらせを繰り返す。ある日、言い争いになり、法律要件が変わった今なら自己防衛が成立したかもしれないが、結果的に2人を殺害して1995年に刑務所に入った。 曹さんと同様に執行猶予2年の死刑判決が下った。約15年後、出所した後は冷凍庫での荷物の運搬のアルバイトに就いた。6~7年たって、ぼうこうがんと甲状腺がんが相次いで見つかった。治療費で11万元(約227万円)の借金を背負うことになった。社会からの差別に加え、病魔にむしばまれた体。「絶望しかなかった」と涙目で語る。 弁護士の傅さんの支援で妻と結婚式を挙げることができ、焼き肉店の経営を軌道に乗せて「責任感が生まれた」という。 馬さんは「元受刑者に社会との関係を見つけてくれ、仕事のサポートまでしてくれる傅さんは本当のお母さんのような存在だ」と感謝の言葉を何度も何度も口にした。