子猫のステキな毛並みを思わずほめたら、男前のお兄さん猫も現れた!
こちらの犬の名前は、ランカラです。伝統の布を織る女性たちの警護を任されているのですが、すっかり任務を忘れて熟睡していました。 細い絹糸で紡ぐ、繊細で高品質の織物です。ブータンの民族衣装は、男性は「ゴ」、女性は「キラ」というのですが、正装の装束1着分を織るのに1年以上を要するものもあるのだとか。伝統的な紋様の織り方は、母から娘へ、師匠から弟子へと、口述や実地で伝えられているのだそうです。 気持ちよく眠っていたランカラは起こされて、山の方を見張っていなさいと言われました。放牧された牛や野生のイノシシなどの動物が近寄らないようにするのが彼らの任務です。でも優しそうな顔を見ていると、任務がきちんと務まっているのかどうか心配になります。 隣の家と100メートルくらい離れている家です。「近くに猫がいなくて、遊び相手がいないから、遊んでやってくれたら猫もよろこぶよ」と、飼い主さん。家族以外とほとんど接したことがないそうで、猫は困惑した表情を浮かべていました。
この番犬は、いまは愛想よくしていますが、いざとなったら怖いのだそうです。黒いという意味の「ナクチュン」と呼ばれていました。 ブータンで猫を呼ぶときは「シュシュシュシュシュ」というと、パロの回で書きましたが、犬を呼ぶときは、「ユユユユユ」といいます。「モラップ、ユ、ユ、ユ、ユ」と男性が声をかけると、ゆっくりと犬が近づいてきました。モラップは名前で、カッコイイという意味だと教えてくれました。 リード(紐)でつながれた猫は珍しいので、家の人に話を聞いてみました。以前飼っていた猫が戻ってこなくなってしまい、悲しかったので、今度の猫は紐でつなぐことにしたのだそうです。猫はリードをいっぱいに伸ばして、日の当たるところに出ていました。
新美 敬子