2017年予想、日経平均1万9000円 企業収益改善、日銀ETF買いなどが貢献
2016年は日銀のマイナス金利導入やETF買い入れ、後半には大統領選でまさかの展開で、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に就任することになりました。トランプ次期大統領の経済政策への期待からドルが買われ、株式市場でもトランプ銘柄と呼ばれる金融株、インフラ設備投資関連銘柄が中心に買われました。日本でも同様に株価が上昇しました。 米国経済の明るい兆しが全世界に広がりを見せようとしている2017年の株価はどう動くのでしょうか? 第一生命経済研究所の主任エコノミスト・藤代宏一さんが解説します。
2017年の日経平均株価予想は1万9000円に引き上げ
日経平均株価の予想(先行き12カ月)を1万9000円に引き上げます。目下のUSD/JPY上昇を主背景とした企業収益の持ち直しに加え、高水準の株主還元、日銀のETF購入が株価上昇に貢献すると予想。
また、2016年入り後の実質輸出の強さが証明しているとおり、円高耐性を強めた日本企業の再評価も期待されます。そして何よりも重要なことに、人口減少下で名目国内総生産(GDP)がはっきりとした増加基調にあり、その水準が既往最高に迫っていることを強調したいと思います。
2017年という“単年”でみた場合、筆者の見通しは必ずしも強気とは言えませんが、中長期的には強気な相場観を抱いています。
なお、2017年の株価予想にあたっては、株主資本利益率(ROE)・株価純資産倍率(PBR)マトリクスに照らし合わせた上で、2018年の予想1株あたり純利益(EPS)である114に13.5倍程度の予想株価収益率(PER)を適用。
東証株価指数(TOPIX)の1株あたり純利益(EPS)、ROE、一株あたり純資産(BPS)はコンセンサスを参考に、TOPIXから日経平均への引き直しにあたっては12.5倍のNT倍率を採用しました(上表参照)。
2017年予想の楽観・悲観シナリオ
2017年に予想される楽観・悲観シナリオは以下のとおり。 <楽観> ・米経済の成長率が上向くことで「強い米国・強いUSD」が正当化される。 ・米連邦準備制度(FED)が「高圧経済」の実現に向けてハト派な姿勢を貫くことで米長期金利が安定する。 ・USD高とコモディティ価格上昇が併存し、新興国経済への不安が抑制される。 ・日銀が現行パッケージを維持した上で、株式市場・債券市場への介入を続ける。 ・中国の人民元相場、マクロファンダメンタルズ、各種金融環境が安定を保つ。 ・欧州諸国で「ユーロ離脱」が現実味を帯びないこと。 <悲観> ・新政権の政策不透明感が増幅し、米経済が減速する。 ・FEDが過度に楽観的になり、市場参加者の予想を上回る引き締めを断行する。 ・USD高によって米国の企業収益が蝕まれ、企業支出(設備投資・人件費)が減少する。 ・USD高・米金利上昇が新興国経済への打撃となり、2016年2月と同様の惨事を招く。 ・日銀がマイナス金利を深掘する、或いは10年金利の誘導目標を引き下げる。 ・人民元相場の下落を起点に中国経済の不安が噴出。 ・欧州で「ユーロ離脱の国民投票」が現実味を帯びる。