2017年予想、日経平均1万9000円 企業収益改善、日銀ETF買いなどが貢献
もっとも、グローバルリスクオフの中でUSD/JPY急落に見舞われたとしても、かつてと比べ日本企業の円高耐久力が増していることは評価すべきでしょう。実際、2016年1月から10月までの(前年比でみた)円高にも拘らず、実質輸出は減少するどころかむしろ増加基調にあり、日本企業の競争力向上を物語っています。
また、過去数年に積上げてきた海外子会社・持分法適用会社が稼ぎ出す収益も膨らんでいます。国際収支統計に目を向けると、直接投資収益は年間1兆円ペースが達成されつつあり、10年前に比べおよそ4倍に増加しています。
また、需給面では日銀の年間6兆円のETF購入と4-5兆円規模の自社株買いが重要な役割を担います。日銀によるETF買い入れは、海外投資家の売り越し額を凌駕する規模です。それが効果をもたらすのは自明です。1回(1日)あたり700億円強の買入れは東証一部の売買代金を2兆円とした場合、3.3%に相当する規模感です。
企業による自社株買いは株式市場の需給をサポートし続けると同時に実績ベースで1%強に達する還元利回り上昇が投資家を惹きつけます。
労働市場は改善の兆し 名目GDP増加が示す賃金上昇のサイン
労働市場に目を向けると、有効求人倍率、新規求人倍率、日銀短観の雇用判断DIなど雇用関連指標が軒並み労働需給の逼迫を示す領域にあります。こうした指標の強さの一部は労使のミスマッチによって誇張されている側面があるにせよ、本質的には労働市場の改善を意味していると考えられ、労働集約的なサービス物価の上昇を説明しています。
かつて日本固有の現象であったサービス物価の下落は、空前の人手不足感が顕現化する下でトレンドが変化した公算が大きく、2013年以降の物価トレンド反転が単に円安による輸入物価上昇に起因するものではなかったことを代弁しています。労働集約的なサービス産業を中心に賃金上昇が価格転嫁されていることに鑑みれば、デフレ脱却に最も重要な役割を果たす内生的インフレが発生しているとの判断は妥当でしょう。最近の労働市場の改善とサービス物価の上昇は、人口減少に起因する人手不足という構造的問題がデフレ脱却に貢献するという、一見すると奇妙な現象を浮き彫りにしています。