「5歳児健診」って何? 「就学時健診」があるのに必要な理由…「おうちのカレーはおいしいですか」と質問することも
5歳児健診の意義が社会に十分浸透していない
一方で、5歳児健診にはいくつかの課題があります。 その一つは、発達障害が見つかったお子さんをフォローする先の専門医療機関が少なく、受診までの待機時間が長くなりがちな点です。また、子どもへの接し方を親が学ぶペアレント・トレーニングや療育教室などは、都市部では充実していますが、地方では数も少なく、対応も自治体によってばらばらなことも挙げられます。 また、この健診を実施する自治体がこれまで多くなかったことの背景に、自治体の財政的な問題もあったと思います。国は自治体への財政支援でこの健診の普及を後押ししようと、5歳児健診を実施する市区町村へ一部助成する事業を今年から始めましたが、決して十分とは言えません。 しかし一番の課題は、社会に5歳児健診の意義が十分に伝わってこなかったことです。 医療者の間ですら、5歳児健診の意義が十分に知られているとは言えない点も課題です。5歳児健診のマニュアル (1) はありますが、慣れた医療者ならともかく、一般の医療者がこのマニュアルだけを参考に健診を行うのは難しいかもしれません。また、マンパワーの問題から、余裕がないと二の足を踏む医療者もいそうです。この点についても、実は健診で問診を行うのは医師とは限らず、保健師が対応することもできるのですが、それが十分に周知されておらず、医師でないと実施できないと思われてハードルが高くなっている点もありそうです。 このように、5歳児健診には大きな意義があるのですが、まだまだ社会に浸透しているとは言えない現状があります。こうした課題が社会的に共有され、理解が得られるようになるといいなと心から願っています。 〈参考文献〉 (1) こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業. 5歳児健康診査マニュアル (2) アメリカ小児科学会.AAP Schedule of Well-Child Care Visits. (3) handbook germany. Health Checks for Children & Adolescents. (4) 東京都医師会.5歳児健診事業-東京方式- (5) 金原洋治、【特集 乳幼児健診の最近の話題】5歳児健診、『チャイルドヘルス25巻3号(2022年3月発行)』(診断と治療社)