「5歳児健診」って何? 「就学時健診」があるのに必要な理由…「おうちのカレーはおいしいですか」と質問することも
就学時健診よりも発達の特性を細かく確認できる
では、現在多くの子どもたちが受けている就学時健診と5歳児健診はどう違うのでしょうか。それほど違わないのであれば受けなくてもいいのでは? と思われる方もいるかもしれません。 就学時健診は、年長さんの秋から冬にかけて実施されています。これは小学校入学準備のための健診という側面が強く、集団で評価するため、5歳段階の成長発達を一人一人細かく評価するのには限界があります。 一方、5歳児健診は、5歳の誕生日を迎えた子どもに行うもので、年中さんか年長さんの初めに行います。この健診は必ずしも5歳児全員が対象ではなく(対象の自治体もあります)、保護者が発達を気にされているお子さんを対象とし、一人一人の発達について、どのくらい言葉の意味が分かっているのか、指示が通るのかを細かく確認し、発達の特性を確認していくという特徴があります。
健診のやり方は自治体によって様々
5歳児健診は実際どのように実施されるのでしょう。5歳児全員を対象とする小さな自治体のケースもありますが、多くは全員にアンケート調査を行ってピックアップする方式や、希望者のみを対象とする方式(大きな自治体に多い)です。また開催形式も、集団健診の形をとる場合もあれば、個別健診で対応するケースもあります。このように自治体ごとに様々ですので、関心のある方はご自身がお住まいの自治体に確認されるとよいでしょう。ただし5歳児健診を行っている自治体はまだまだ少ないのが現状で、それが大きな課題となっています。
発達障害や場面緘黙、ゲーム依存が分かることも
5歳児健診は、ほかの健診と同様に、まずは身長や体重の測定、栄養状態の評価を行います。それに加えて発達について確認します。具体的には、「なんという保育園に通っていますか」「おうちのカレーはおいしいですか」などと質問して会話能力を確認したり、「帽子って何をするもの?」などと物の用途を聞いたりします。ほかにも、じゃんけんやしりとりができるか、腕を横に上げる動作をまねできるか、片足立ちができるかといったことをチェックしたりします (4) 。問診と診察の後にカンファレンスを行い、様々な職種で話し合い、支援が必要なのか評価を行います。このように細かくチェックすることで発達障害の可能性を探ることができます。 こういった健診で、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害、場面緘黙(かんもく)症などが見つかることがあります。場面緘黙とは、特定の場所や状況で話すことができなくなる状態のことで、例えば家では普通に話せるのに、学校では緊張して話せなくなってしまうというお子さんです。こうしたお子さんは不登校や心身症になりやすいことが知られているため (5) 、早めに見つけることで支援につなげることができます。また、最近急増しているのがゲームやインターネット依存状態のお子さんです。依存は小学校に入ると状況がさらに深刻になる可能性があるため、入学前から対処方法など相談できるのはとても重要です。5歳児健診は小学校入学前に子どもの特性に保護者が気づく機会になり、それは専門機関での支援につながるきっかけにもなります。