学校のいじめとエアコン問題に通底するもの カギは「五箇条の御誓文」?
学校現場において、いじめは変わらず大きな問題となっています。昨夏はエアコン設置の問題が注目を集めました。慶應義塾大学SFC研究所の上席所員で起業家の岩田崇氏は、学校で噴出するこうした問題に通底するのは閉鎖性であって、個人の責任の追及よりビジョンを作り上げて共有することの方が重要だと訴えます。そしてこうした問題の解決に不可欠なものは――。岩田氏に寄稿してもらいました。
犠牲出さないと変われない教育現場
酷暑だった昨年の夏、熱中症で一人の児童が亡くなりました。この痛ましい事故は衝撃を持って報じられ、小中学校のエアコン設置問題が注目されました。これを受けて、文部科学省は熱中症対策として空調設置費用約 817億円の補正予算を組み、各自治体でも既存設置計画の前倒しなどを行っています。 一方で、昨年10月には、学校でのいじめに関する調査報告書(※1)が文科省から発表され、いじめによって子どもが生命、心身又は財産に被害を受ける「重大事態」が過去最多の474件発生していたことが明らかになりました。 「いじめ防止対策推進法」によって、いじめの早期認定と対応が推奨される中、いじめ件数が増えることは、ある意味で成果ともいえます。 しかし、2013年の同法施行から4年間で942人の児童生徒が自殺しており、施行以前の4年間より149人増えています。いじめを早期に判定できるようになっても、児童生徒の生命は守れていないのです。 「エアコン」と「いじめ」。一見何のつながりもないように見えるこの2つの問題の根底にあるのは、コミュニケーションの閉鎖性とビジョンの不在です。 コミュニケーションは学校の内外すべてにおいて十分ではなく、ビジョンについてはどんな子に育ってほしいかという共通認識がありません。よく学力向上が謳われていますが、学力は手段でしかありません。この2つの不在は密接な関係にあります。コミュニケーションが閉じていることでビジョンが共有できず、また、ビジョンがないためにコミュニケーションが閉じる、あるいはそれらが同時に起こっていることも考えられます。