年月という“汚し”。ボクシングジムとスナックのテーマカラーはリング『あのクズを殴ってやりたいんだ』美術のこだわり
■スナックとバーにも“ボクシング”の遊び心が そんな下町感は、明美が経営する「スナック 明美」にも漂う。「太田区・大森にある通称・地獄谷と言われている山王小路飲食店街の通りが、まさしく“スナック 明美”の雰囲気と同じ。小さい店舗がいくつも並び、2階部分が住居になっている感じから、おのずとレトロな感じになりました」と明かし、その店内にはこだわりも。「ごちゃっといろんなものが密集してるような感じを意識しました。カウンター席の上の壁には、小道具さんが斉藤さんの似顔絵やスナックによくありそうなサイン色紙が貼ってあって、このあたりはよく見てもらえると面白いと思います」。 佐藤家全員が集まるスペースにもなっているスナック。主人公の妹の一人娘が勉強するスペースは監督からのリクエストだったという。「美々も一緒に居させたいという監督からのリクエストがあったので、みんながスナックにいるときはカウンター席の端を美々のスペースにして、そこで勉強できるようにしました」と話す。 赤いベルベットのソファや、ハイチェアが印象的な「スナック 明美」とは打って変わり、海里が働くバーは青いライトが印象的だ。「海里が働いているバーと差をつけたいということだったので、ボクシングリングの赤コーナーと青コーナーのイメージで“スナック 明美”は赤、バーは青を基調にすることを意識しました」と、“ボクシング”が舞台の作品ならではの遊び心が組み込まれている。 アシスタントと同居する海里の部屋にも、こだわりが。「玉森さんがベランダに出て芝居することもあって、プレハブのような外観が映るので、内観をどうしようとなったんです。そこで、事務所みたいなところを間借りしていて、そこを住居にしている設定になりました。なので、備え付けの流しがあるような事務所の感じは残しつつ、そこに監督から要望があった海里と相澤の2人がDIYした何かを入れたいということで、海里が作業するデスクや壁面は2人が作った感じにしました」と、外観に合わせて内観を作ったことを明かしてくれた。
様々なこだわりを語ってくれた藤本氏。ドラマのテーマでもある<折れない心><諦めないマインド>を持ち続けるための秘訣を尋ねると、「一つ一つこだわって、ここだけは折れずにやっていこうという軸を自分のなかで作ること。美術としてそのこだわりがなくなったら終わりだと思うので、納得できるものを作っていきたい」と明かしてくれた。これからさらにボクシングが舞台の中心になっていく本作。リアルさが追求されたジムの細部も注目したい。
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