年月という“汚し”。ボクシングジムとスナックのテーマカラーはリング『あのクズを殴ってやりたいんだ』美術のこだわり
さらに、イラストが描かれている試合のポスターについては「ボクシング漫画のポスターを飾りたいと思い、イラストを描くことが好きなスタッフに、ボクシング漫画に出てきそうなキャラクターを描いてもらいました。あとは練習生の名前は、スタッフの名前をもじって入れていたりします」と一つ一つセット内を巡りながら語ってくれた。 ■実際の用具を使うことでよりリアルさを演出 そんな羽根木ジムは、外観だけでなく内観もどこか昔からある下町のジムの雰囲気を感じさせる。「セット打ち合わせのときに、火曜ドラマということもあって、ボクシングジムをどのようなテイストにもっていけばいいのか話をしたんです。そこで監督から“昔からあるような、ちょっとレトロな雰囲気のジム”というイメージをもらって。なので、昔は会員にも困らず、繁盛していたようなジムとして、汚しが効いていたり、古い用具や器具を集めました」と明かす。 集められた古い用具には実際のボクシングジムから借りてきたものも。「第3話で主人公が打っていたサンドバッグは20年ぐらい使っているものをお借りしました。ジムの中央にあるゴングは、サンドバッグを借りたジムとは違うジムから、ちょっと調子が悪くなって今は使っていないということでお借りして飾らせてもらっています」と、年季の入った用具が下町感を増進。 中でもボクシンググローブは、「新品できれいなものは色が鮮やかですが、相手の顔を殴るときにワセリンを塗っているそうで、何度も使っていくうちに変色していくんです。この汚しは僕ら美術が頑張ってもできないところなので、実際に使っているものをお借りすることでリアルさを出しています。リングも本来はきれいなものを用意したのですが、大道具さんに頼んで使い古している感じが出るように汚しを入れてもらっています」と“汚し”が味を出している。 またトレーニング器具もアナログなものが多い。「今はプレートを変えることで、重さを調整できるバーベルが多いですが、羽根木ジムに置いてあるバーベルはそれぞれ重量ごとになっています。ダンベルは借りてきたものに、うちで用意したものを混ぜて、最新のマシンが揃っている筋トレのジムみたいにならないように小道具さんに選んでもらいました」と、どこまでもレトロで下町感が追求されている。