23XIレーシングとフロントロウ・モータースポーツによるNASCAR独占禁止法訴訟は長期化へ。仮差し止め命令適用でチャーター購入は一部承認か
最終戦フェニックスでの“チャンピオンシップ4”にて、ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が2年ぶり自身3度目の年間制覇を達成したNASCARカップシリーズだが、そのNASCAR運営側を相手取った『独占禁止法違反(反トラスト訴訟)』の申し立てを続ける23XIレーシングとフロントロウ・モータースポーツ(FRM)の法廷闘争は、両者並行線により長期化の様相を呈しており、ひとつの区切りとなる12月31日まで残された時間はわずかとなっている。 【写真】法廷闘争の渦中に巻き込まれた2024年レギュラーシーズン王者のタイラー・レディック45号車トヨタ・カムリ 来季2025年のNASCAR参戦契約署名期限までにサインをしていなかった2チーム、トヨタ陣営の23XIと同フォード陣営のFRMが、主催団体たるNASCARとCEOのジム・フランスに対して『反トラスト訴訟』を起こした1件は、今季限りでチーム解体となった強豪スチュワート・ハース・レーシング(SHR)のチャーター契約購入の話題も絡み、両陣営から米国地方裁判所宛に提出されていた『仮差し止め命令』の申し立てを含め、混沌の一途を辿っている。 アメリカスポーツ界の伝説的存在であり“バスケの神様”として崇められるマイケル・ジョーダン所有の23XIは、FRMらと共同で10月上旬にもノースカロライナ州で訴状を提出し、2025年のNASCAR憲章協定を標的としつつNASCARとフランス家が「反競争的慣行を使用し、透明性のない運営を行い、競争を抑制し、他者に対して不公平な方法でスポーツをコントロールしている」と主張した。 その一方でチームは、今季2024年にレギュラーシーズン王者を獲得したタイラー・レディックの45号車と、同ダレル“バッバ”ウォレスJr.の23号車に加えて、移籍加入でカップ昇格を果たすライリー・ハーベストのために35号車のトヨタ・カムリXSEを準備。この渦中に来季3台体制への拡充を予定している。 しかし独占禁止法違反の申し立てを続ける状況から、他チームが署名したNASCAR参戦契約に正式にサインをしておらず、本来なら権利を有していたはずのチャーター権行使は宙に浮く状態に。FRMを含め2025年のカップ参戦とチームの活動は確約されておらず、そのため両陣営とも来季もチャーターチームとして参戦できるよう、改めて『仮差し止め命令』の申し立てを実施していた。 チャーター契約は本年12月31日をもって期限を迎えることとなり、権利を所有するチームには各レースの出場枠と賞金の一部が保証されるものの、それを持たないオープン登録での参戦は、大幅に少ない金額しか受け取れないことになる。そのため両陣営とも「NASCARにより、チームの活動に回復不可能な被害を被る」と主張していた。 この件に関し、米国地方裁判所のケネス・D・ベル判事は12月18日付けで「2025年NASCARシーズンの仮差し止め命令と、SHRからのチャーター購入を承認する」との判決を下し、NASCARにはその購入を妨げ「チームの活動に決定的な損害を与える権限はない」と判断した。 ■「判決が停止されなければ、NASCARは回復不能な損害を被る」 これにより両チームはチャーター契約に適用されるすべての条件でチャーターチームとして競争できるようになり、一部例外として「チャーター契約の免責条項は執行されない」とも言い渡した。また、契約を結ぶドライバーの立場を保証する観点から「他のドライバーも同様に切迫した懸念を表明している」と判決主文には記された。 「ドライバーのババ・ウォレスは、他チームのシートを模索できるよう23XIが『すぐに』どのように活動し、来季も競争するつもりなのかを知る必要があると 23XIに伝えた。コーリー・ハイムも『他のカップチームと話をして、他に機会があるかどうかを確認できる』よう『すぐに』回答が必要だと書いた」 この点はスポンサーに関しても同じ問題が主張され、ベル判事は「要するに、原告は仮差し止め命令を支持するのに充分な、回復不能な損害の可能性を示した」と述べた。 これにより、先行して11月に一度はその仮差し止め命令を却下されていた両陣営としては、控訴を経た再提出で主張が実った格好だが、NASCAR側もすぐさまこれに反応。「裁判所の判決が停止されなければ、NASCARは回復不能な損害を被る」とし「この裁判所の仮差し止め命令によりNASCARは原告との望ましくない契約関係に追い込まれるため、公共の利益は部分的停止を支持する」と主張し、翌日には控訴に踏み切った。 このNASCARからの控訴、つまり「仮差し止め命令の部分的停止を求める申し立て」に対し、前出のベル判事は12月23日にふたたびの判断を下し、改めて申し立てを却下。仮差し止め命令を修正し、NASCARに「SHRからFRMへのチャーター販売を直ちに承認」するよう命じた。 「裁判所には、この事件の特殊な状況に基づいて、差し止め命令を作成する広範な裁量権がある」と記された。 「裁判所は、裁判後に下された最終的な救済措置の一環として、SHRが譲渡したチャーター権の売却を要求するか、その他の措置を講じる公平な権限を有する。被告がFRMへの移管を承認しないと述べた理由はすべて、FRMがこの訴訟を取り下げ、独占禁止法上の請求を放棄する意思がなかったことに基づいていたことが記録に示されているという事実認定を再確認する」 「上記のように、この放棄は違法と判断される可能性が高い。さらにFRMによるSHRチャーターの購入を承認しないNASCARの差し止め命令を拒否することは、チャーターレースのスポットを獲得するまれな機会を失うことになり、FRMに直ちに回復不能な損害を与えることになるだろう」 [オートスポーツweb 2024年12月25日]