Netflix新作アニメ「Tokyo Override」の監督にインタビュー!こだわりのエキゾーストサウンドと「ポップ・ノワール」な世界観に注目だ
──今作は「自由」の象徴としてバイクが印象的なモチーフとなっていました。なぜ、あえてバイクなのでしょうか? 「むしろ企画の段階でバイクが未来世界を疾走するバイクアクションもの、というアイデアだったので、未来世界でバイクが疾走するとすれば、それはどんな世界で、そのバイクはどんなものなのか、という順番に発想を広げていきました。そして、ワールドビルディングの過程で、AIによって最適化された世界の中で人間(世界)の持つランダムさのようなものを象徴するものとしてのバイク像ができていきました。 そして、あるホンダさんとのディスカッションの中で、バイクに乗るという行為の中には「移動」と「楽しむこと」があり、今後自動化などが進んでいけば「移動」の側面が強くなることもあるかもしれないが、それでも「楽しむこと」の側面はなくならないのではないか(あるいは、なくならないで欲しい)、という話がありました。もちろんこれは車にも言えることだとは思うのですが、自動運転の流れを考えれば、よりバイクに「楽しむこと」の側面が求められていくのではないか、といった考えを作品に落とし込んでいきました。」 ──搭乗するバイクは実車をモチーフとした3モデルが登場します(CB1300、YZF-R1、VMAX)が、なぜこの3モデルに? 「アニメーション作品ということで見た目から、というのはもちろんあるのですが、バイクが絶滅しつつあるという世界設定上、レースに使われたものや一点もののような希少なものよりは、かつて市場に出回ったものの方が未来世界まで残っている、という方が説得力があるのではと考えました。また、この遠い未来の世界と私たちの住むこの世界をいかに接続するか、どうすれば視聴者の方に実感や体感を持って作品を楽しんでいただけるか、と考えた時に、今実際に走ってるモデルが登場するということでより直感的に感じていただけるのではないかと考えました。なので、広告用に選んだのでは、なんて邪推する方がおられるかもしれませんが、この作品に関しては作品世界とストーリーにマッチし、また視聴者の方と身体的、直感的な繋がりを作るために私たちクリエイターの独断と偏見で選ばせていただきました。 その意味では、街中でR1やCB1300を見た時に(多分VMAXはなかなかお目にかかれないと思いますが)「Tokyo Override」の世界と一瞬でも繋がりを感じていただければとても嬉しいです。」 ──バイクの登場シーンで、特にこだわった要素はありますか? 「音にはとてもこだわりました。音に関してはYAMAHAさん、HONDAさんに全面協力いただき、各社の各モデルを実際にお借りして様々な生音を録音させていただきました。しかし実は生音をただそのまま使うだけではエンターテインメントとしてのケレン味のようなものが出ないので、そこはサウンドチームと相談しながらDolby ATMOSで仕上げていきました。 見た目もバイクのシルエットや質感の美しさ、カッコよさを思う存分味わえるようにこだわりつつ、ただリアルにすると作品として浮いてしまうので、そのバランスにはとても気を使いました。そこはリアルでありつつ、エンターテインメント作品として成立するするように調整してもらいました。 あとはバイクの存在感、重量感もこだわりました。激しいアクションを作る際に、見た目としてヒョイヒョイと軽く動く見た目になってしまわないように、タメのようなものをできるだけ意識してもらうようにアニメーターたちには何度も注文を出しました。 試写の際に皆さんに初めてアニメーション、音が付いたものを見ていただいたのですが、試写中は人生で初めて手汗を書くくらい緊張しました。でも試写後皆さんにとても満足していただけたことを聞いてホッとしたのをよく覚えています。」