米銀、商業用不動産リスクに盲点-REIT向けローン考慮されず
(ブルームバーグ): 米銀大手は不動産投資信託(REIT)にクレジットライン(与信枠)やタームローンを提供しており、規制・監督当局の評価以上に商業用不動産(CRE)へのエクスポージャーが大きい恐れがある。
インド準備銀行(中央銀行)の副総裁も務めたニューヨーク大学のビラル・アチャルヤ教授(経済学)らが執筆した最新の研究論文によれば、大手行のCRE貸し付けへのエクスポージャーは、REITへの間接的な融資を加えると約40%増加する。問題を抱える不動産業界が貸し手にもたらすリスクの議論で、その点がおおむね見落とされてきたという。
米連邦準備制度理事会(FRB)が資本要件に関する銀行ストレステスト(健全性審査)を実施する際、REITへの金融機関のエクスポージャーをより適切に組み込むべきだと研究者らは主張した。
アチャルヤ教授はインタビューで、「銀行のバランスシート上のローンに誰もが注目する。大手行はより規模が小さい金融機関に比べ相対的にエクスポージャーが小さいという盲点にとらわれるべきでない」と語った。
執筆者の1人であるジョージア工科大学のマナサ・ゴパール助教(金融学)は「集中的な信用枠からのドローダウンで最大手行が被る付随的ダメージは、CREエクスポージャー全体から生じるシステミックリスクが、直接的エクスポージャーだけ見た場合より恐らくはるかに大きい可能性を意味している」と指摘した。
米銀大手のCREへの間接的エクスポージャーは、2022年10-12月(第4四半期)時点で3450億ドル(約54兆円)と、13年の同じ時期(1090億ドル)から増加した。
オフィスの長期的価値が在宅勤務で脅かされる一方、借り入れコスト高騰が多くの集合住宅投資に打撃を与える状況で、新型コロナウイルス禍の発生以降、REITは困難に直面してきた。
スターウッド・キャピタル・グループやブラックストーンなどが運用するREITは過去2年にわたり一部投資家が資金引き揚げに動き、流動性を維持するため償還が制限された。