年金受給前の55歳で熟年離婚してしまいました。それまで専業主婦だったのですが「年金」を多くもらうにはどうしたらいいですか?
子育ても落ち着いてきたころ、さまざまな事情で熟年離婚を選択する夫婦もいます。しかし、自身が専業主婦として暮らしてきた状態で離婚をすると、老後の年金がどうなるのかと不安を感じる方もいるでしょう。 老後の年金が不安なときは、年金額を増やすための対策が必要です。今回は、専業主婦が受け取る年金額や年金を増やす方法などについてご紹介します。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える?
専業主婦が受け取る年金額はいくら?
専業主婦の方の場合、受け取れるのは基本的に老齢基礎年金のみです。老齢厚生年金は会社勤めの方が厚生年金に加入した場合に受け取れる年金のため、一度も厚生年金に加入したことがない専業主婦の方の場合は該当しません。 日本年金機構によると、もし老齢基礎年金のみの場合だと、令和6年度の金額では満額で月額6万8000円、年81万6000円です。ただし、結婚するまでに働いていた期間があった場合は、その期間に応じた老齢厚生年金を受け取れます。
年金を増やす方法
受け取れる年金額を増やすためには、パートやアルバイトで働いて厚生年金に加入するほか、制度を利用して元夫の厚生年金の分割を受ける方法もあります。それぞれの方法で、受け取れる金額を見ていきましょう。 ■働いて厚生年金に加入する 老後に受け取れる年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類ですが、会社に勤めていた期間がなければ厚生年金に加入していないため、老齢厚生年金を受け取れません。 離婚後にパート勤務などを始めて条件に該当していれば厚生年金に加入できるため、老後の年金額を増やせる可能性があります。日本年金機構によると、厚生年金に加入できる条件は「1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上ある」ことです。 また、4分の3未満であっても、「1週間の所定労働時間が20時間以上あること」や「賃金月額が8万8000円以上であること」などの「短時間労働者」の資格取得要件をすべて満たす場合は、被保険者となります。 条件を満たしていれば、収入と厚生年金の加入期間に応じた老齢厚生年金を受給できます。老齢厚生年金の金額はおもに報酬比例部分で計算でき、日本年金機構によれば、計算式は「平均標準報酬額×1000分の5.481×加入月数」です。平均標準報酬額は、月収や賞与を基に決められる標準報酬額の平均値をいいます。 例えば、パート勤務で厚生年金に55歳から10年間(120ヶ月)加入し、月収は11万円、平均標準報酬額も11万円だったとしましょう。計算式に当てはめると「11万円×1000分の5.481×120ヶ月」となり、老齢厚生年金を約7万2349円受け取れます。 ■「3号分割制度」を利用する 離婚した直後であれば、「3号分割制度」の申請をすると老後の年金額を増やせる可能性があります。3号分割制度とは、条件に当てはまる方が申請をすると、婚姻期間中の第3号被保険者期間における元夫や元妻の厚生年金記録を2分の1ずつ当事者間で分割できる制度です。日本年金機構によると、以下の条件に該当していれば制度を利用できます。 ●離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求している ●婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の厚生年金記録がある 請求をする際は、当事者双方の合意は不要です。そのため、もし離婚後は夫と連絡が取れていなくても、制度を利用できるでしょう。 厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」内の資料によると、3号分割制度の利用前後における女性の平均年金月額は、制度の利用前が4万4555円、分割後の改定額が平均5万1793円でした。月額7238円増加で、年換算で8万6856円増えている計算です。