これからの遺言はどうなる?「デジタル遺言(電子遺言)」「自筆証書遺言保管制度」活用のポイント【相続専門税理士が解説】
相続手続きの現場も、IT化の流れが進んでいます。デジタル遺言を筆頭とした「電子化」により、手続きは格段に楽になる可能性があります。ここでは「デジタル遺言(電子遺言)」「自筆証書遺言保管制度」について見ていきます。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「デジタル遺言」が実現したら、遺言書作成の敷居は下がる
内閣府の規制改革推進会議では「デジタル遺言制度」の実現に向けた検討が2022年から行われています。もし「遺言書のデジタル化」が実現すれば、遺言書作成はぐっと敷居が下がり、身近になるのではないでしょうか。 「デジタル遺言」とはなにかというと、法的効力がある自筆証書遺言を、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上に作成し、保管できる制度のことです。 いまの「自筆証書遺言」では、本人確認や意思確認の手段として、全文の自署、日付、署名、押印が必要ですが、インターネット上ではそれができなくなることから、代わりとなる本人確認手段や改ざん防止の仕組みを構築しなければなりません。その点については、ネット上での顔撮影、マイナンバーや顔認証、電子署名などの利用が検討されています。 自筆証書遺言の場合、紛失や改ざんのリスクがありますが、デジタル遺言ならクラウド上で遺言を保管するため、ブロックチェーン技術等で改ざんを防止することが可能となります。 自筆証書遺言も、相続人に見つけてもらえない、紛失する、改ざんされるなどの理由で相続争いになることもあります。そういった状況を考えると、自筆証書遺言と比較した場合、デジタル技術の活用によって一定の信頼性を確保できるデジタル遺言のほうがメリットがあるといえるでしょう。 もっとも、すべての人にとってメリットがあるとまではいい切れません。高齢者の方のなかには、インターネットの操作以前に、デジタル機器が苦手な人もいるため、その点は課題が残るといえます。 ただし、インターネットを利用できる人にとっては、操作は簡単になるでしょう。インターネット上でフォーマットに沿って入力することで、遺言の書き方がわからない人でもスムーズな遺言書作成ができると考えられます。 日本ではまだ実現していないデジタル遺言ですが、海外では「紙以外」の遺言制度の整備が進んでいます。たとえばアメリカでは、2人以上の証人の前で電子署名すればデジタルでの遺言書を認めるという、「電子遺言書」の制度があります。韓国では、録音による遺言が認められているのです。