日ハムの球団経営を圧迫する旧態依然の壁
球団のグループ会社などが所有権を持ち運営する“自前の球場”を持っているのは、巨人、阪神、中日、西武、オリックス、ソフトバンク、そして、今回、球場のM&Aに成功した横浜DeNAの6球団だ。横浜も経営権がDeNAに移る前までは、チケット売り上げの26パーセントを球場側がとっていて、球場は黒字なのに球団が赤字というアンバランスな経営形態が続いていた。TBSの身売り後、DeNAが経営権を得てから、交渉の末、チケットからの取り分は、半分の13パーセントに抑えられたが、飲食などの売り上げは取られ、契約の隙間をすり抜けるアイデアで、ワゴン販売などを導入するなど工夫をしたが、球場ビジネスに関する企業モチベーションは上がらず、観客動員を飛躍的に増やしても、赤字経営からは抜け出すことができなかった。 だが、球場の経営権をM&Aで取得したことで経営ビジョンは大きく変わった。早速、球場内の様々な独自メニューやクラフトビールまで発表したのは、やればやるだけ実入りとなるからで、球場と球団の一体化経営のたまもの。なにより、ファンも観戦時の楽しみが増え、重要なファンサービスが充実していくことになる。横浜DeNAには、壮大なボールパーク構想があって、今後、球場も斬新なものに生まれ変わる。 日ハムも、メジャー式の営業ノウハウは持っていて、本来ならば、球場、球場周辺の開発も含めたボールパーク化計画を進めたいのだが、実質、行政が持っているドームの旧態依然とした“官僚的な壁”にぶつかって、球場の改装も球団主導では進まず、せっかくのノウハウを使うに使えないのが実情。メジャー型のボールパーク化へのトレンドからは立ち遅れている。そして球団経営さえ圧迫されている。 人が集まれば、行政にも、はかりしれないプラス面が生まれ、なにしろ、球団と一体になって、地域のスポーツ文化を創生することにつながるのだが、今のところ官僚体質を脱皮できず、温度差は大きい。今後も球団と札幌ドームの間で協議が続けられていく方向だが、このままドーム側の理解を得られないのならば、最悪のケース、日ハムが“重大な決断”を下しても不思議ではないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)