日ハムの球団経営を圧迫する旧態依然の壁
スポーツビジネスの原則は、利益が出れば、それをチーム強化や顧客満足度をアップするための施設などへの投資に使い、ファンへ利益を還元するもの。ソフトバンクの孫オーナーは、ハッキリとその方針に基づき、積極補強を仕掛けていることを公言している。日ハムは、独自の育成ノウハウシステムを持っていて、FAや高額な外国人補強には手を出さずにドラフトを軸に若手を育てるという堅実なチーム強化を行い、Aクラスを維持している。それは大きく評価されるべきものだが、ドームとの関係が改善し、経営が健全化すれば、チーム強化も、勝敗に左右されることなく球場動員につなげるための、球場の内外の施設充実やサービス向上に対しても、積極的な投資を行うことが可能になるのだ。 その象徴例が楽天だろう。5月に約2億円の総工費をかけて、本拠地、コボスタ宮城に球界初の観覧車がオープンした。高さ36メートルで左中間に隣接するエリア「スマイルグリコパーク」内に設置されて、別途乗車料金400円が必要だが、試合観戦も可能。ゲームがなくても球場近辺にくれば、休日が楽しめる「ボールパーク化構想」の一端。この大胆な開発が可能になっているのも、行政と球団が協力関係を築き、ウインウインの良好な関係にあるからだ。 2004年に起きた球界再編の折、球場と球団の歪な関係がクローズアップされた。ここが、長らくセ、パの格差を生み日本のプロ野球の発展を妨げてきた問題だった。莫大な球場使用料、チケットの売り上げからの吸い上げだけでなく、球場の飲食やスポンサー看板代などすべてが球場の収入となり、改装なども自前では行わない。球団は赤字なのに球場は黒字という異常現象が長年続いていた。しかし、この球界再編問題以降、日ハムを除いた11球団では、歪な関係が徐々に解消されている。 新参入の楽天も、当時の宮城県知事の浅野知事に協力を求め、球団が旧県営宮城球場の改修費用を全面負担して、施設を県に寄付する形で、都市公園法に基づく管理、運営権を譲渡された。今回の観覧車の増設も含め、すべて楽天が予算を組んで行い、宮城県に寄付をするという形態が取られた。しかも、年間の使用料も、札幌ドーム35分の1程度に抑えられた。 日ハムと同じく行政からの“間借り”の球団は、前述した楽天に広島、ロッテの3球団。ロッテは2006年に千葉マリンスタジアムの指定管理者になったことで、管理、運営権を得て、球団の年間売り上げは、その後4倍強に増加した。09年にオープンしたマツダスタジアムは、広島市の所有で球団が使用料とは別に市へ10年間で21億円強を納めるが、球場の管理、運営権は得ている。そのため、バーベキュー席などユニークな仕掛けがいくつも施され、今ではスタンドが真っ赤に染まる。グッズ収入も右肩上がりだ。独立採算制の広島が、黒田博樹の凱旋帰国を実現できたのも、球場ビジネスの成功がバックにある。