子どもがペットをいじめても叱れない親まで…過酷な中学受験で「親が奴隷になる」のを防ぐ処方箋とは
反抗期を迎えない子ども
「親は多額のお金をかけて塾に通わせているので、仮に子どもが塾を嫌がっても、親は行かせたい。すると、主従が逆転して“塾に行ってくれたら欲しいものを買ってあげる”となり、親がお願いする形で子どもを塾に行かせるのです。その後、中学受験を経て入った学校で本人が学校の環境に適応できればいいのですが、もし適応できなかった場合、“お前に言われたからこの学校に入ったのに”“お前のせいでこんなひどい学校に行かされた”とその暴力性が親に向かうことになる。それが何回も続くと完全に主従が逆転した親子関係に至ってしまうというわけなんです 」 逆に子どもが中学校で適応したとしても、別の問題が起こり得る。“反抗期を迎えない子ども”だ。 「私が教えている大学でも反抗期のない学生はとても多いです。そういう子は親子密着が過ぎて、自分で物事を決定することができません。例えば、友達と服を買いに行ってその子がピンクの服を気に入ったとしましょう。するとその子は服を写メしてLINEで母親に送って確認してもらうんです。結局、“ピンクはダメ、紺がいい”と母親から言われるとその瞬間にピンクの服はやめてしまう。そうした子が就職すると、自分で意思決定できなかったり、ストレス耐性がなくて、就職先の環境になじめず、すぐに仕事を辞めたりしてしまう、ということもあるのです」 では小学校時点で親は子どもに対しどういう“構え”をしておくべきなのか。
小学校卒業で信頼を60%に
「先ほどの『信頼と心配』という点でいえば、小学校入学時点でその比率を信頼30%心配70%くらいで考えておきましょう。それを小学校卒業の時点で信頼を50%、願わくば60%くらいにまで高めていく。具体的には子どもがやることには口を出さずにとりあえずは泳がしてみましょう。例えば、“宿題をしなさい”と言うのではなく、放っておく。いつ宿題するのかな、と思いながらも口には出さない。子どもは本当に必要だと感じたら、自分から宿題をやりだすものです。中学受験において結局、受験に臨むのは子どもですから、親が手を貸してもしょうがないんです」 とはいえ、まだ幼い小学生が相手のこと、中学受験では親の意志がなければ、合格を勝ち取れないという意見もあるだろう。 「小学校3年生や4年生では『こころの脳』が育っていないわけですから、自分で意思決定をすることは難しい。ですから、中学受験をするかしないかは親が決める必要があるだろうと思います。ただ、その上でどこの学校を受けるか、は子どもが高学年になった時に、学校見学などをして、子どもがその学校に行きたいと思っているか、子どもの適性としてその学校に合っているか、を観察し、偏差値以外の部分でよく見て決めるべきだと思います」