してやったり!豊昇龍「体が反応した」逆転のとったりで大の里撃破/九州場所
大相撲九州場所13日目(22日、福岡国際センター)豊昇龍(25)は大の里(24)との大関対決をとったりで制し、大関琴桜(27)も平幕隆の勝(30)を上手投げで破り、ともに1敗を守った。隆の勝は3敗に後退して2敗が消え、大の里は5敗目。優勝争いは、千秋楽で琴桜と豊昇龍の対戦が番付上確実で、事実上2大関の一騎打ちに絞られた。 【写真】とったりで大の里を下した豊昇龍 一連の動きが、点から線へとつながっていく。大関同士の対戦は先輩の豊昇龍が新大関の反撃を土俵際でかわし切った。 「動きは悪くなかった。この一番は落とせない。しっかり集中してやった。体が反応した」 大の里を押し込み、先手を取った。突き返されて土俵際まで後退したが、前へ出たぶんだけ陣地には余裕があった。俵に足が掛かってから相手の左腕を手繰り、体を右へ開いてとったり。大の里を土俵下へ転がした。8日目から6連勝。1敗を守り、琴桜とともに優勝争いの最前線は譲らない。 師匠の立浪親方(元小結旭豊)は、昨年名古屋場所で初めて賜杯を抱いたときと比べて「ずいぶん落ち着いてきて、顔つきもかわってきた」と指摘した。関脇だった令和4年九州場所。豊昇龍は今場所同様1敗で11日目を終えて単独首位にいたが、12日目から3連敗を喫して自滅。師匠は「悔しさも経験、自信へとつなげているのだろう」。 元横綱で人気解説者だった北の富士勝昭さん(享年82)が亡くなった。元横綱朝青龍のおいとして豊昇龍が新入幕を果たしたとき、NHKテレビの解説で「朝青龍が幕内に上がってきたころは、もっと殺気をはらんでいた。これは相撲じゃないぞ、とね」と性格の違いを看破していた。 武道では「殺気」を、危険を予知して動き、呼吸、心理を読まれないよう「気配を消す」と教える。豊昇龍は、破竹の勢いで昇進してきた大の里にも「同じ大関として頑張っている。先輩大関などという意識はない」と敵対心を見せない。土俵際のとったりは思いもよらない気配を消した逆転技。大関8場所目。2度目の賜杯が見えてきた。(奥村展也)