70年前の愛本駅ジオラマに 黒部、宇奈月温泉発展の礎 富山高専・16歳深居さん製作
●モダンな屋根、廃止の貨物線、整備中の変電所… 宇奈月温泉発展の礎を築いた富山地方鉄道愛本駅(黒部市宇奈月町内山)の1950(昭和25)年ごろの駅舎と周辺の様子がジオラマに再現された。富山高専2年の深居賢人さん(16)が製作を手掛け、今も開業時の姿をとどめる駅舎のモダンな屋根を忠実に仕上げた。貨物線や整備途中の変電所も配置し「ジオラマを通じて郷土の発展の歩みを感じ取ってほしい」と期待を込めた。 【写真】1988(昭和63)年5月18日に撮影された愛本駅 高専の鉄道部に所属する深居さんが郷土のジオラマづくりの題材を探していたところ、愛本駅の特徴的な屋根の意匠に関心を持った。現地調査を重ね、屋根の構造や細かな装飾品を一つずつ記録して再現した。 ジオラマは150分の1のスケールで縦45センチ、横60センチ。厚紙で外観を作り、窓枠は細く切った軟らかいレポート用紙で細部を表現した。駅舎の内部にこだわり、切符売り場やベンチ、運賃表、時刻表を配置したほか、有人駅だった頃にあった駅員の机や乗客の荷物計りまで作り込んだ。 1950年当時、建設途中だった変電所で作業員が工事に励む様子や、廃線となった貨物線や貨物倉庫も国土地理院の航空写真などを活用して仕上げた。 ●住民懐かしむ ジオラマを鑑賞した愛本地区の住民からは「確かに貨物の倉庫があった」などと当時を懐かしむ声が聞かれた。富山高専鉄道部OBで黒部市三日市の会社員嵯峨拓也さん(34)は「駅周辺の建物の位置関係を伝える資料はあまり残っていない。貴重な資料になるのではないか」と語った。 ●黒部・友学館で展示 深居さんは「愛本駅が物資の往来拠点だったことを知ることができて良かった。黒部の開発の歩みをぜひ知ってほしい」と話した。ジオラマは黒部市うなづき友学館で12月22日まで展示する。 ★愛本駅(あいもとえき) 1923年(大正12)年、黒部鉄道の三日市駅―桃原駅(現宇奈月温泉駅)間の開業に伴い開設した。43年に富山地方鉄道と黒部鉄道の統合に伴い、富山地鉄の黒部線となる。67年に貨物取り扱いを廃止し、69年に黒部線は富山地鉄本線に移行した。94年に駅業務が廃止されて無人駅となった。