企業のアートとの関わりに変化の兆し 「アートとビジネス」実態調査
経済産業省が2023年に公開した「アートと経済社会について考える研究会の報告書」も話題となり、より頻繁に語れるようになった「アートとビジネス」の話。しかし、特に企業の取り組みに関しては、どんな取り組みをして、どんな成果が出るものなのか、実態はあまり明らかになっていない。 Forbes JAPAN別冊『ART AS AN ATTITUDE アート・ドリブンな未来入門』(2022年3月発行)を起点にスタートした「Forbes JAPAN ART & BUSINESS PROJECT」では24年、企業120社を対象に、アートへの取り組みに関する調査を実施。自社のビジネスにアートを取り入れようと試行錯誤し、それが成果や兆しとなって表れ始めた実態や意識の変化が見出された。 本レポートでは、匿名による回答結果の定量的分析に加えて、複数の企業に個別インタビューを行った結果から、なぜ今多くの企業がアートに取り組むのか、取り組むことでどんな成果や変化が現れたかについて、新たな示唆が得られる内容となっている。 ◾️調査結果の概要 今回の調査は先の別冊特別号の中の1セクション、「FRAME WORK 企業によるアートへの取り組みの実践」で示した4象限のアプローチに基づき、顕著な事例に偏ることなく2024年現在の企業のアートへの取り組みの「実態」を把握することを試みた。 特筆すべきポイントは、今回『アートを活用した取り組み「あり」と回答した企業』のうち33%がスタートアップであったこと。これまでアートへの取り組みは本業が安定した大企業が行うイメージが強かったが、今回の結果は、社会の常識や通念に問いを発し、0→1で新たな価値を創造するスタートアップこそ、ビジネスの本質に近いところでアートやアーティストの姿勢を取り入れる必然性があるという仮説の一つの証左とも見ることができる。 またこれまでアートとの親和性の高いとされた業種、企業にも取り組みの変化が見られたほか、それ以外の業種、企業にも新たな事例が確認され、企業のアートへの取り組みに、多くの新たな兆しが見出された。 以下、レポートから一部抜粋してポイントを紹介する。 <企業活動にアートを取り入れているか> APPROACH 1から4のいずれかの領域でビジネスにアートを取り入れているという答えた企業は回答を得た120社中92社。内33%がスタートアップとなっている。 <(アートに取り組む)目的・意義に対してどの程度成果を上げているか> 「貴社の取り組みはその目的・意義に対してどの程度の成果を上げているか」という設問のうち、「大いに成果を上げている」という回答が16.3%、「成果を上げている」が33.7%となり、約半数が成果を実感していることがわかった。 <アプローチ別取り組み割合> 取り組みの内容としてはAPPROACH 2「企業・ブランドメッセージの発信」(ブランディング/マーケティング・プロモーション/メセナ・CSRなど)が約8割(84.8%)と最も多かったが、先端的な領域であるAPPROACH 4「革新的なビジョン・アイディアの創造」(未来構想・ビジョン策定/イノベーション創出/プロトタイピングなど)にも約6割(59.8%)が取り組んでいると回答した。 <企業カテゴリ別の取り組み比較> 中堅~大企業とスタートアップ企業では、アートへの取り組みや意識に差異が見られた。スタートアップについては特に「人材の多様性の確保」(APPROACH 1)、「イノベーション創出」(APPROACH 4)が多いといった特徴が見られた。 ◾️主体や取り組み内容に多様化の兆し アート&ビジネスの具体的な取り組みについての自由回答からは、これまでアートとの親和性が高いとされた業種、企業にも取り組みに変化が見られる一方、これまでアートへの取り組みが少ないと思われた新たな業種、企業の事例も増え、アートとビジネスの関わり方に多様化の兆しが見られた。また、実践のパートナーとして、コンサルティングファームが存在感を高めていることがわかった。 ■従来からアートに取り組んできた業界の企業事例 デベロッパー(三菱地所 | 有楽町アートアーバニズム、三井不動産 | 未来特区プロジェクト 、森ビル | 麻布台ヒルズ 、東京建物 | Brillia Tower 堂島)、百貨店(大丸松坂屋 | ARToVILLA)、金融(みずほファイナンシャルグループ、SBIアートオークション) ■新たにアートに取り組み始めた業界の企業事例 医薬品(ファイザー | サイエンスアート展)、製造(貝印 | AUGER ART ACTION)、郵便・物流(日本郵便 | 地方自治体のNFTアート販売)、総合エンタメ(エイベックス・クリエイター・エージェンシー | MEET YOUR ART、東京大学×ソニーグループ | 越境的未来共創社会連携講座) 【目次抜粋】 ▶︎APPROACH別・分析結果 ─APPROACH 1 – 人材の意識変革・創造性の向上 ─APPROACH 2 – 企業・ブランドメッセージの発信 ─APPROACH 3 – アートを活用したビジネス開発 ─APPROACH 4 – 革新的なビジョン・アイデアの創造 ▶︎Insights – リサーチ結果から読み解く「きざし」 ─Insight 1 – アートに取り組む意識の変化 ─Insight 2 – アートとアントレプレナーシップの関係性 ●【CASE STUDY】BIOTA ●【CASE STUDY】Gotoschool ─Insight 3 – アートビジネスへの参入のあり方の変化 ●【CASE STUDY】みずほフィナンシャルグループ ●【CASE STUDY】エイベックス・クリエイター・エージェンシー ─Insight 4 – 事業パートナーにおけるコンサルの存在感 ─Insight 5 – 取り組み成果の実感値の高さ ●【CASE STUDY】LIFULL
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