習近平・中国国家主席の欧州歴訪:米中対立の長期化見据え、「仲間探し」が狙いか
仏の「独立自主」強調して米国をけん制
最初の訪問国フランスとは今年、国交樹立60年を迎えた。習氏はマクロン大統領夫妻による歓迎宴の乾杯の挨拶で、米国の反対を押し切って台湾を切り捨て中国と国交を結んだ当時の大統領ド・ゴールを引き合いに出した。両国関係の「特別さは独立自主」とし、「中仏往来のどのハイライトも、独立自主という強力な要因が背後で支えており、これは大切にされ、継承され、発揚されるのに値する」と述べた。欧州の「戦略的自律性」を掲げるマクロン氏に、米国からの「独立自主」を念押しする意味合いがある。首脳会談では対立点を追わず、ウクライナや中東情勢で「平和」に向けて語り合う姿を内外に示すことを優先し、経済でもAI(人工知能)のルール作りで共闘する姿勢をみせた。コロナ禍前後は「戦狼外交官」として名をはせた盧沙野大使も、すっかり牙をしまいこんでいる。 セルビア、ハンガリーは近年、政権が言論統制や野党攻撃で権威主義化を強めており、中東欧きっての親中の国だ。セルビアのブチッチ大統領、ハンガリーのオルバン首相はともに、2023年10月に北京で開かれた「一帯一路」サミットに参加した限られた欧州の首脳だった。 習氏にとってセルビアは8年ぶり2度目の訪問だ。コソボ紛争が激化した1999年のNATOによる旧在ユーゴスラビア中国大使館爆撃の日(5月7日)にあわせて、首都ベオグラードに滞在した。大使館への爆撃は米軍機によるもので、ここでも米国がキーワードとなる。今なおNATO不信の強いセルビアのブチッチ氏は「台湾は中国のもの。簡単な話だ」と言い切り、首都の中心部を中国の赤い国旗と「歓迎、尊敬する中国朋友」のスローガンで埋める歓待ぶりだった。 中国はベオグラードと第二の都市ノビサドの間の高速鉄道の建設を支援し、バルカン諸国で唯一となる時速200キロの列車が走る。「一帯一路」のインフラ投資が中国経済の減速に伴って先細りする中、中国にとって貴重な看板事業となっている。