仲野太賀、“演劇の父”の作品で念願の主演 『虎に翼』優三さん役は代えがたい経験に
◆舞台デビュー作から13年 夢が叶った岩松作品の主演
『虎に翼』『新宿野戦病院』と話題作への出演が続き、11月には映画『十一人の賊軍』の公開が控えるなど、フル回転の活躍を見せる仲野太賀。2026年放送の大河ドラマ『豊臣兄弟!』での主演という大役も控える彼が、“演劇の父”だという岩松了とのタッグで舞台『峠の我が家』に挑む。六度目の登板となる岩松作品の魅力や、「代えがたい体験だった」と語る『虎に翼』で演じた“優三さん”との出会いなど、充実期を迎える仲野太賀の今を語ってもらった。 【写真】何気ない佇まいにも、ついつい目が奪われてしまう仲野太賀 本作は、『結びの庭』(2015、宮藤官九郎主演)、『家庭内失踪』(2016、小泉今日子主演)、『少女ミウ』(2017、黒島結菜主演)、『二度目の夏』(2019、東出昌大主演)など、次々と話題作を発表、高い評価を得てきた、M&Oplaysと岩松了が定期的に行っている、人気プロデュース公演の最新作。夏の間は旅館も営む、峠にある古びた家を舞台に、そこに嫁いだ女と、たまたま立ち寄ることになった男、さらには2人を取り巻く人々、それぞれが心に抱えた傷や痛み、思惑が交錯する様が描かれる。岩松了が作・演出・出演し、仲野のほか、二階堂ふみ、柄本時生、池津祥子、新名基浩、豊原功補といった熟練のキャストが顔をそろえた。 2011年に岩松作・演出の『国民傘-避けえぬ戦争をめぐる3つの物語-』で舞台デビューを果たした仲野にとって、今回の『峠の我が家』は、初めて単独主演として岩松の演出を受ける作品だ。 「18歳で出た『国民傘』は、ワークショップオーディションで出演が決まりました。そこから今に至るまで、5作品に出させていただいて。少しずつ役のウエイトが大きくなっている実感はあったんですけど、自分自身、俳優としての演劇のキャリアが、岩松さんの作品と共に積み上がってきたというか、岩松作品があったからこそ育ててもらったという自負があったので、出会って10年以上経ち、自分も31になって、こういうタイミングで初めての主演ということですごくうれしかったですね。ひとつの目標でもあったので、夢が叶いました」。 オファーを受け、「キター!!!!」という感じだったという仲野。台本を読み、本作をどんな作品と捉えたのだろうか? 「キャラクターの中に戦争っていうものの影を色濃く感じるといいますか。背景としては戦争があり、心に傷がある人だったり、過ちを犯してしまった人だったり、そういう人が赦しを求めながら惹かれ合っていくような印象です。でもそれをとても分かりやすい表現で描いているわけではないので、そのキャラクターが何を思って何を感じているのか、想像しながら観てほしいです。舞台上にあるものだけじゃなく、水面下にあるものを読み取りながら観てもらうと楽しいんじゃないかなと思います」。 今回演じる安藤は、峠を越えたところに住む兄の戦友の家に、戦友の軍服を届けに行くという男性。何か隠された事情を抱えるように映る人物でもある。岩松からは「逸脱する男の色気を期待してます」とのコメントも寄せられた。 「読めば読むほど、すごくカロリーが要りますね。平常な精神状態じゃなく、どこかずっと心拍数が高いというか、むしろ落ち着ける場所を潜在的に探している印象なんですけど、まぁやっていて落ち着かないです。これがずっと続くのかと思うと大変だなと(笑)。色気については今のところ逸脱しきれていない(笑)。岩松さんもそのことに一切触れないんです。どうなんでしょう? それがゴールとも思っていないので、いつか出れば…っていうくらいで、今はそんなに考えてはいないです」。