広がる木造建築、オフィスビルやホテルにも 三菱地所のグループ会社が「非住宅」に注力
カーボンニュートラル実現へ、木の活用を提案
――非住宅の木造建築の拡大に向けて課題となるのはどんな点ですか。 やはり耐震性と耐火性です。耐震性に関しては、建物の用途や規模に応じてリーズナブルな構造計画を立て、適切な構造計算を行うことがポイントになります。耐火性については、2×4工法の場合は、大臣認定や告示で仕様が明確に決められていますので、それに対応していくことが必要です。 日本では伝統的に、住宅は無垢の木でつくるのがよいとされてきましたが、一方で木の強度には限界があります。今後はCLT(直交集成板)やLVL(単板積層材)などエンジニアリングウッドの活用にも力を入れ、従来なら木ではコストパフォーマンスが悪いとされたような建物や、2×4工法ではできないような空間づくりにもチャレンジします。 また、三菱地所グループとして森林の非破壊や自然生態系の保護を図る「木材調達ガイドライン」を設けていますので、それに沿った木材の調達も進めます。 先ほどお話ししたように、非住宅が売り上げに占める割合はまだ2割くらいです。今後、非住宅の売上をさらに伸ばすとともに、戸建て住宅にも取り組み方次第ではシェア拡大の余地は残っていると思っています。非住宅と住宅のバランスをとり、工場の稼働率を上げて効率よく生産していきます。 ――今後のビジョンを教えてください。 当社では私が社長に就いた2019年、SDGsへの関心の高まりを受けて、千葉大学でSDGsを研究している先生にお願いして半年間、全社員を対象としたワークショップを実施しました。その効果もあり、社内に意識が根付いたと感じています。 社員には、自分たちの生活が社会や環境に負荷をかけてきたことを自覚し、それを変えていく努力をしてほしい。カーボンニュートラルの実現に寄与するため、「この構造材は木に変えられないか」「表層材は木にできるのでは」と、次々に提案できるような会社になれればと思っています。 (聞き手 朝日新聞SDGs ACTION!編集長・竹山栄太郎)
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